ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派出協会:談話室ー

マリア「はい。どんな物に追いかけられるのか玉木様にうかがっていた時。」

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対面するように互いに椅子に座ってCHM員は話をレコーダーに録音しつつノートにペンを走らせていた。

玉木『顔が半分ないような全身が腐っておるような。』

CHM員『……』

玉木『うん?顔色が悪いようじゃが大丈夫かの?』

CHM員『え…ええ…。実は私、すごいこわがりで…とにかくお化けが駄目で……お話をうかがってるだけで気分が……でも、お仕事ですから頑張ります。』

そう話しているときおマリは何気なくぽつりとつぶやいた。

マリア『いますよね。お化け屋敷が苦手な人とかって。』

CHM員『キャーーッ!!やめてー!言わないでー!ああっ、子供のころお化け屋敷で両親とはぐれて死ぬ程怖かった思い出がーー!』

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マリア「と言う感じに、すごい反応でした。」

お熊「作戦が決まったわ。」

お熊さんが何かを思いついて数日後、おマリは別室に呼び出された。

部屋に入ってみると壁際におどろおどろしい化物が釣り下がっていた。よくよく見てみると大きなチャックが口を開けている。

マリア「すごいきぐるみですね。」

お熊「知り合いの貸し衣装屋から借りたのよ。CHMの彼女を夜中に呼び出すの。玉木の爺様が悪夢について何か思い出したとかいってね。」

マリア「ふむ」

お熊「で、おマリちゃんがきぐるみを着て彼女をおどかすのあの家の近くにはお化けがいると思わせれば、二度と玉木邸に近づかなくなるわ。」

マリア「なるほど。じゃあ、ちょっと着てみますね。」

お熊「どう?」

マリア「うわっ……視界が悪いですね。お熊さんがボーッとした人影にしか見えませんね。」

プロなら慣れや感覚でどうにかなるのかもしれないが、素人のおマリではさすがに具合はよくない。

お熊「ボーッとでも見えれば大丈夫よ。今夜決行よ。」

その日の夜、おマリは玉木邸近くの茂みに隠れて忍んだ。そろそろCHM員が玉木邸へと向かう時間だ。

CHM員「いやだわ、夜道は苦手なのに、でもお仕事じゃしょうがない……。」

マリア「(なんと言っておどかそう。やっぱりモモンガーかな。)」

CHM員「あっ、事務所にヴォイスレコーダーを忘れた!取りに戻らなくっちゃ!あーん、夜道の往復ー!」

来た道を戻るCHM員と入れ替わりに、相変わらず夜の散歩を続けている玉木兵六が帰路についていた。
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