ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派出協会:談話室ー

マリア「反省しても、どうしようもありません。玉木様も話し上手なCHMのペースに乗せられてしまい。それから毎日彼女を家に呼んでカウンセリングを受けてるんです。まだ成果は出てませんがもし彼女が成功して悪夢を見なくなったら玉木様は正式に雇い入れるでしょう。」

お熊「そうなるでしょうね。」

マリア「そうなったら私はクビです。どうしたらいいんだろう、と悩んでいるというのはそのことなんです。」

お熊「ずいぶん長い前置きだったわね。だけど、おマリちゃん。あなた、そのお宅をやめるつもりじゃなかったの?」

マリア「そうなんですが……でも、CHMに追い出されてやめるというのがなんともシャクで」

お熊「気持ちはわかるけど。でも、弱ったわね。あたしも心理学なんかよく知らないし、その部分で対抗するのは無理だわ。」

マリア「そうですか…。」

お熊「そのCHMが殿方だったら」

マリア「はっ?」

お熊「あたしのお色気作戦でなんとかなったかもしれないけど……同性じゃあねぇ。」

しなっと柳腰になりつつ肩を見せる怪物もといお熊。

マリア「アーハイハイソーデスネェー。」

お熊「そうだ。玉木兵六よ。」

マリア「えっ?」

お熊「年は取っても男よ。あたしが誘惑してその女をやめさせるのはどう?」

マリア「マジやめてください。お年寄りは心臓が弱いんです。お熊さんを見たら、大変なことになります。」

お熊「そうねぇ。あたしの美貌は刺激が強すぎるかもね。」

マリア「もう勝手にいっててください…。」

お熊「とにかく、いったん悪夢や心理学から離れましょう。まず、その女を追い出して、あとのことはそれからよ。」

マリア「追い出すってどうやって?」

お熊「一番手っ取り早いのは……江戸川に沈めましょうか。」

マリア「やるんならひとりでやってください。私を巻き添えにしないでください。」

お熊「ほほほっ、もちろん半分冗談よ。」

マリア「半分本気じゃないですか。」

お熊「彼女には苦手なものはないの?」

マリア「苦手なもの?」

お熊「もしゴキブリが苦手なら、トラック一杯のゴキブリを放り込めば逃げていくわ。」

マリア「玉木様も一緒に逃げ出しそうです。あっ、そういえば……」

お熊「なにか?」

マリア「彼女、怖がりみたいなんです。」

お熊「怖がり?」
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