ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:都内ー

数日後、仕事を終えて帰路についていたクラークに教会の牧師らしい男が声をかけた。

牧師「もしもし」

クラーク「はい?」

牧師「すみませんがサボイ通りというのは?」

クラーク「それなら……」

牧師「どうも」

道を尋ねられたので行き方を教えて二、三言葉を交わし終えると牧師は礼を言ってその場を去って、クラークも家路についた。

そして、その夜……。

異様に太く一本につながったかのような眉毛と、横分けの薄い頭髪、大きく裂けたような薄い唇。他にも団子っ鼻、たれ目などの特徴を持った、丸顔の中年男が現れた。

クラーク「わーーーっ!!」

クラークはベッドから飛び起きて電気をつけた。ほぼ同時に叫び声に使用人が驚いてドアをノックしていった。

「旦那様!どうかなさいましたか!」

クラーク「執事……!いや、なんでもない、夢を見ただけだ。」

「さようでございますか、それではおやすみなさいませ。みな、なんでもない。夢をご覧になったそうだ。」

「お忙しくてらっしゃいますから…」

扉の前から使用人たちの声が遠ざかりクラークはひとり考えていた。

クラーク「(気にしてるつもりはなかったが……罪の意識?ふん、バカバカしい子供のころから横柄だったオーエンを始末してせいせいしてるんだ。ことのついでに遺産が手に入るのは喜ばしい。何も問題はない。似顔絵を見すぎたから夢を見たんだ。どうってことはない。)」

たまたま夢見が悪かっただけだ、そう結論付けてクラークはもう一度眠りについた。

しかし、それから数日後……。

THISMAN『よくもオレを悪用してくれたな』

クラークは首を絞められた。あの男に……殺される、そう思った瞬間に叫び声をあげながらベッドから転げ落ちた。夢である。THISMANに首を絞められる悪夢をみたのだ……。

クラーク「うわーーっ!」

ドンドンッとドアを強くノックされ、使用人たちが叫んでいる。

執事「旦那様!旦那様大丈夫ですか!?」

クラーク「なんでもない!私にかまうな!」

執事「はあ…」

クラーク「どういうことだ!私も世界中の多くの人間と同じようにTHISMANに憑りつかれたのか!このままでは使用人に疑われてしまう何とかしなくては……かといって薬物に頼るのは危険だし……。腕のいい精神科医に相談してみるか無様な話だが背に腹は代えられない。」
33/100ページ
スキ