ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「もちろん2千人と言うのは医師にかかって表面化した人数ですから、実際にはその何倍、いや何十倍の数の人間がTHIS MAN と名付けられたこの男の夢を見ている可能性があるのです。」

グルメ警視「殿下、これはフィクションではないのですか?」

ミハイル「現実です。現実に起きていることです。」

チコ「その夢男のTHIS MANって何者なんでしょうか。」

ミハイル「いろいろな説がある。」

グルメ警視「複数説があるのですか?」

ミハイル「ストレス説宗教的な啓示とする説。あるいは、どこかの大企業が特殊な装置を使って他人の脳に直接特定のイメージを送りこむ実験をしているのだという説もあって、もしそうだとするとそのうちTHIS MANが夢の中で清涼飲料水かなにかのコマーシャルを始めるかもしれませんが……。まあ、あてにはならない説です。彼の正体について本当のことはわかりません。」

グルメ警視「ふうむ。殿下そうするとですね。」

ミハイル「はあ」

グルメ警視「オーエン氏もTHIS MANの夢を見ていたことになります。」

ミハイル「そうですね。でなければ似顔絵を描けるはずがない。」

グルメ警視「もし氏が夢の中でTHIS MANにおびやかされていて、その悪夢から逃れるためにふだんより大量の睡眠薬を飲んだのだとしたら」

ミハイル「オーエン氏はTHIS MANに殺されたことになりますね。」

グルメ警視「しかし相手が夢の男では指名手配も逮捕することもできない。こんなやっかいな犯人は初めてです。」

ミハイル「まったく……ホームドクターの…クラーク先生でしたか、は似顔絵を見ても知らないといったんですね。」

グルメ警視「ええ、それがなにか?」

ミハイル「オーエン氏がそれほど悪夢に悩まされていたのなら、ふつうかかりつけの医者に相談しませんか?」

グルメ警視「そういえば……」

ミハイル「もしクラーク先生がTHIS MANのことを知っていてあえて隠したのだとしたら」

チコ「隠す理由があったことになりますね。」

グルメ警視「クラーク先生のことを調べてみましょうか」

ミハイル「お願いできますか」

グルメ警視「夢の男を調べるよりズンとラクです。」

ミハイル「そりゃまぁそうだ。」

数日後……

チコ「殿下、グルメ警視からお電話です。」

グルメ警視『クラーク先生について興味深い事実が判明しました。』

ミハイル「なんです。」

グルメ警視「先生はですね。実はですね。」

ミハイル「じらさんとさっさといわんかい。」
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