ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

グルメ警視「ですね、自分でも何が気になるのかわからんので殿下にお知恵を願えないかと思ってきたわけです。」

ミハイル「ふむ、その絵は?」

グルメ警視「現物のうちの一枚を持ってきました。」

警視が差し出した紙には異様に太く一本につながったかのような眉毛と、横分けの薄い頭髪、大きく裂けたような薄い唇で団子っ鼻、たれ目などの特徴を持った、丸顔の中年男の絵が描かれている。

ミハイル「THISMAN(ジスマン)!」

チコ「ジスマン?」

グルメ警視「お知り合いですか!」

殿下は首を横に振った。

ミハイル「いや……世界中探してもこの男の知り合いは見つからないでしょう。しかし、この男を知ってる人間はたくさんいます。」

チコ「は?」

グルメ警視「どういうことです?!」

ミハイル「僕も……世界名探偵友の会会報の最新号を見て知ったばかりなのですが、120ページ「近頃世界で起きている奇妙な出来事」というコラムです。」

殿下は棚から会報を取りだしてグルメ警視に手渡した。

グルメ警視「拝見します。」

チコ「私も見ていいですか?」

ミハイル「ああ。」

コラムにはこう綴られていた。

2年ほど前アメリカのある若い女性が精神科医を訪れた。そしてこう話したのだ。

『見たことも会ったこともない男の夢を見るんです。』

彼女曰くスーパーだかコンビニだかのレジの中に立っていると、いつの間にかその男が後ろに立っていて……。

『何も言わずにじっとあたしを見つめるんです。ただそれだけなんですが、毎晩同じ夢を見るので気味が悪くて…』

精神科医もなんの事やら訳が分からず、とりあえず彼女に男の似顔絵を描かせてみた、その絵が……。

「「あっ!」」

グルメ警視とチコは揃えて声をあげた。

そこに載っている絵はさっきの男とほぼ同じ特徴をもった男の絵である。

グルメ警視「殿下、オーエン氏が描いたのと同じです!」

ミハイル「続きをどうぞ」

女性に安定剤を処方して返した数日後、今度は男性がその精神科医を訪れた……。

『毎晩同じ男の夢を見るんです。夢の中でぼくは空を飛んでるんです。するとその男がついてきて、何も言わずに僕を見つめるんです。』

まさかと思いながら精神科医が男に似顔絵を描かせてみると、数日前の女性と同じ絵を描いた。

チコ「なんという不思議な偶然だろうと思った医師がお仲間の精神科医たちに似顔絵を添え、こんなことがあったとメールを送ったらうちの病院にも同じ男の夢を見る患者が来た、実はうちの病院にも……と同様の症例の情報が続々と寄せられて……」

ミハイル「最終的には世界の10数か国で2千人以上の人がこの男の夢を見ていることが判明したのだ。」
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