ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「殿下、エメラダ警察のグルメ警視がお見えです。」

ミハイル「待ってました。」

チコ「えっ、お約束が?」

ミハイル「そうじゃない。警察が訪ねてきたからには事件だろう。退屈してたんだちょうどいい暇つぶしになる。」

チコ「はぁ…」

応接室に入ると挨拶もそこそこに警視が要件を切り出した。

グルメ警視「昨夜、実業家のオーエン氏が亡くなりまして」

ミハイル「殺人事件ですね!現場の状況は密室ですか!それとも別の形の不可能犯罪!?容疑者は凶器はアリバイは!?」

待ってましたとばかりに質問をまくしたてる殿下だったのだが

グルメ警視「いえ…睡眠薬を飲みすぎたのです。」

ミハイル「誰かが無理やり飲ませたか調べればいいんですね!」

グルメ警視「殿下。先走らないでください。今回のことに事件性はありませんあくまでも事故です。」

ミハイル「はあっ?」

グルメ警視「オーエン氏をご存知ですか?」

ミハイル「わが国で10本の指に入る資産家でしょう。王室主催の園遊会で一度だけあったことがあります。」

グルメ警視「かかりつけの医師であるドクタークラークの話によると、オーエン氏は不眠症に悩まされていて強い睡眠薬を常用していたそうです。」

ミハイル「ふむ」

グルメ警視「メイドがいつも通り午前7時に起こしに行って自室のベッドの中でこと切れているオーエン氏を発見したのです。現場の様子、使用人やホームドクターのクラーク先生の話、また検死医の見立てなどから、オーエン氏が分量を誤って睡眠薬を飲み、そのため死亡したのは間違いありません。つまり事故です。」

ミハイル「わかりませんね。なぜ単なる事故の話をするためにわざわざ宮殿まで来たんです。……ハッ!?僕に会いたくて?」

グルメ警視「殿下、不気味な冗談はやめてください。」

ミハイル「つまらん事故の話されたらなんなと面白いことを考えんと」

チコ「すいません。暇のし過ぎでいつも以上にひねくれてまして……」

グルメ警視「こほん、実はオーエン氏のベッドのわきにデスクがありメモパッドが置いてあったので何気なく見てみたら誰かの似顔絵と思しき絵が数枚描かれていたのです。オーエン氏が描いたのは間違いないと思いますが使用人やクラーク先生に見せてもこんな人物は知らないとの話。何でもないことかもしれませんが妙に気になりましてね。」

ミハイル「刑事のカンというやつですか」
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