ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派遣協会ー

夢前マリアはアラファト家政婦派遣協会の家政婦です。

おマリも他の家政婦さんたちも順調に仕事を続けていましたが、しかし最近CHA(事前を基本とした家政婦集団・チャリティホームメーカーズ)という新しい家政婦派遣会社が近所に出来たため、たいへん困ったことになっているのです。

お熊「仕事が減ってるわ」

おばさん「あたし今まで週に5軒かけもちしてたけど3軒CHMにとられちゃった。」

おばちゃん「あたしは2軒」

マリア「厳しいですね」

番頭「CHMで働いておるのは、かつて派遣切りにあった契約社員たちじゃ。CHMは彼らを格安の給料で雇っておる。給料は安くても仕事にありつけるし肩書も正社員なのでCHMで働きたいと希望する人間は多い。その連中を短期間で教育して家政婦にするわけだから当然サービスの質は高くないが、しかし、なんといっても人件費が安いから料金はうちの半分ほど、サービスには目をつぶって安い方に乗り換えようと考えるのは、この不況の世の中では仕方のないこと。とはいうものの困った話じゃ。」

マリア「番頭さん誰かに説明してるんですか?」

お熊「あら、おマリちゃんはお仕事減ってないわね。えらいわね。」

マリア「いえ、それが……練馬の大林様から今週いっぱいで、と言われてるんです。」

お熊「まぁ、あなたも」

おばさん「やっぱりCHM?」

マリア「ええ、年金暮らしのおばあ様ですからお金の問題が最重要になられるようで」

おばちゃん「いずこも同じね」

番頭「とにかく愚痴をいっとってもしょうがない。個々のサービスの向上をめざしてお客様を引き留める努力を続けてくれ。」

「「ふわーい」」

マリア「言うのはカンタンですけどねぇ。」


~~


大林「おマリさん、ごめんなさいね。とてもよく働いてもらったのに」

マリア「いえ、ご事情はよく承知しておりますので。」

大林「そういってもらえると助かるわ。」

「ごめんくださーい」

マリア「おや、勝手口にどなたか」

「どうも、ごめんください。富山の万金丹本舗の者です。」

大森「ああ、富山の置き薬屋さんよ。半年に一度くらい来てお薬を補充して使った分の代金を受け取っていくの。祖母の代から愛用しているの効き目が穏やかだから、とてもいいのよ。」

マリア「はあ、聞いたことはあるけど、今でもこんな商売があるんですね。」
25/100ページ
スキ