ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派遣協会ー

番頭「ところが、どこかから新しい資金が注入されて、計画が復活したらしいんじゃ」

お熊「どこの誰が資金を出したか知らないけど余計なことを…」

安太郎「強力なライバルの出現だな」

「「「会長!」」」

安太郎「わしがキャッチした情報によると、新しい家政婦派遣会社の名称はCHM」

マリア「CHM?」

安太郎「慈善を基本とした家政婦集団チャリティー・ホームメイカーズの略だ」

マリア「なんだかもったいぶった名前ですね。」

安太郎「CHAで働くのは全て派遣切りにあった契約社員。仕事であぶれた彼らを格安の給料で雇い。給料は安くても正社員の肩書にひかれ多くの人間が募集に応じている。彼らを短期間で教育して、家政婦として続々と送りだそうとしているわけだ。」

お熊「短い教育で一人前の家政婦なんか出来っこありません。うちはベテランぞろいですから、サービスでは絶対負けませんよ。」

「「「そのとーり!」」」

安太郎「しかし人件費が安いから料金を低く設定できる。もしかしたら、うちの半分くらいの料金をぶつけてくるかもしれん。」

「「「半分!?」」」

おばちゃん「それはちょっと厳しいわねえ」

おばさん「安さにひかれてうちから、乗り換えるお客さんもいるかも」

安太郎「番頭、サービスの向上はもちろんだがさらなる内部努力でうちの料金を少しでも安くできんか?」

番頭「そうですねぇ」

マリア「あのーこれは以前から考えていたんですが」

番頭「なんだおマリ言ってみろ」

マリア「私たちがうかがった先で、お料理を作るとき近所のスーパーやお店で材料を買うわけですが、でも、それだと必ずしも安い買い物ができるとは、かぎりません。業務用のスーパーと言うのがあってものすごい安いそうです。トラックでいろんな食材を大量に買い込んで、それを毎朝皆さんに配ったらどうでしょう。買い物の手間がはぶけるし、個々に買うより絶対に安いですからお客様にも喜ばれると思います。」

安太郎「むっ、おマリでかした!グッドアイデアだ。番頭、さっそく検討してみろ。」

番頭「ははっ!」

おマリのアイデアが採用されて、数日後……。

おマリは新しい派遣場所へと通っていました。いつも通り勝手口側から入ろうとすると男物の靴が並んでいた。お客様かと一瞬思ったが、それなら表口にあるはず。ふと視線をあげると大き目バッグも置かれていてそこには「CHM」のロゴが入っている。
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