ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

殿下の命令によって調査開始から2時間後……。

ミハイル「エスメラーダ=カーミラ、スペイン系アメリカ人56歳。ハーバード大学経済学部卒○○年チェルシー入社経理部からばってきされて秘書室長に……ずいぶん有能な女性だったらしいな。」

チコ「そうですね。」

ミハイル「こっちはホテル関係者の資料か、えーと総料理長……総料理長?よく知らんが彼らがチェックインしたのは夜の11時半だ。そんな時間まで総料理長がホテルにいるかな」

チコ「夜中でもルームサービスはやっているんですよ。」

ミハイル「そんなのは部下に任せるんじゃないか?ああ、やっぱり住所を見ると市(シティー)の北のはずれだ。通いなら11時半には帰宅してたはずだ。」

チコ「とすると無関係ですか」

ミハイル「警備主任……うーん、ピンっとこないな。客室係主任。そうか犯行にはキーが必要だったはずだから、あくまでも推論だがピノキオ氏の状態から見て、薬物を飲まされたのではないかと思われる。シャンパンではなさそうだからオードブルだろう。無味無臭のしびれ薬だか睡眠薬だかが混入していたためにアルコールとの相乗効果で意識を失うほど悪酔いしたのだ。」

チコ「つまり犯人は2人が酔いつぶれたころ合いを見計らって部屋に忍び込み犯行に及んだということですね。」

ミハイル「そうだ。それにはキーがいるからマスターキーを持っていた客室係の主任は要チェックだ」

チコ「なるほど」

ミハイル「客室係主任キアヌリー=ブスいい男になりそうな名前だな。ええと、エメラダ出身でエメラダ中学からエメラダ高校、エメラダ大学を卒業して翌年ホテルに就職、渡航歴なしの40歳……およそ女子とは接点のなさそうな男だなぁ。もう一人のマスターキーの持ち主、支配人はどうだ?」

チコ「支配人はホテルに住んでるんです。」

ミハイル「へえ」

チコ「仕事熱心なのかほかに家を借りるのがもったいないのかは知りませんが」

ミハイル「支配人ネイン=チャック=シーツ56歳。エメラダ出身でハーバード大学卒……ハーバード!?女史と一緒だ!しかも56歳ということは女史と同い年、同級生だったのかもしれない!」

チコ「ホテルに住んでるんですからチェックインしたとき、女史に気が付いた可能性が!」

ミハイル「支配人だからウェルカムドリンクの手配も簡単!それを持っていこうとしたボーイを呼び止め、自分が運ぶといって、そしてオードブルに薬を混ぜて持って行った!こいつが犯人だ!!」
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