ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ビジネスホテルー

殿下と警部のあいだに不穏な空気が流れていると部屋にひとりの警官が入ってきた。グルメに近づくとそっと何かを耳打ちした。

警官「警視、解剖はこれからですが……」

グルメ「むっそうか!殿下、どうやら私の推理が正しかったようです。」

ミハイル「……」

グルメ「最近の警察医学は進歩していまして人間の身体からも指紋が採取できるのです。被害者の首に残された指のあとからピノキオ氏の指紋が検出されました。動かぬ証拠です。」

ミハイル「……ピノキオ氏と話しをさせてください。」

グルメ「国王命令ですか?」

ミハイル「そうです」

グルメ「……どうぞ」

チコ「普段はわりと親密な二人の間に、なんとなく妙な空気が流れてますね。」

ムーン1「うむ」

隣の部屋に移動した二人。中では数人の警察に囲まれてピノキオ氏らしき男性がソファーに腰かけていた。顔色は控えめにいても青黒い。

ミハイル「ゼペット=ピノキオさんですね。エメラダ国王ミハイル八世です。」

ピノキオ「ああ、あなたが……国王自らお出ましとは恐れ入ります。いったいなにがあったのです。秘書はどこです。誰も何も教えてくれないのです。」

ミハイル「説明するまえに昨夜のあなたの行動を細大もらさず聞かせてください。」

ピノキオ「咲夜1時に空港につき、11時半にこのホテルにチェックインしました。スイートルームで一休みして居たらウエルカムドリンクのシャンパンと簡単なオードブルが届いたので、となりの部屋のカーミラ女史を呼び。女史と言うのは秘書のことです。父の代から働いてくれている、私にとっては叔母のような頼りになる存在です。」

グルメ「フンッ」

ピノキオ「女史もお酒をたしなむ方なのでオードブルを食べ、フルボトルのシャンパンを二人で半分ずつ空け…たところまでは覚えているのですが次に気がついた時には、この部屋で無理やり熱いコーヒーを飲まされていました。」

ミハイル「お酒は弱い方ですか?」

ピノキオ「友人の間では酒豪で通っています」

ミハイル「シャンパンは調べましたか1滴や2滴残ってたでしょう」

グルメ「はっ?」

ミハイル「酒豪がボトル半分で酔いつぶれるのは不自然です。何か混入されていたのかもしれない。」

グルメ「隣にあったものは全部鑑識にまわしたはずだな。」

警官「なにか異常があれば連絡が来ると思いますが、なにも……」

ミハイル「オードブルは」

警官「現場に空の皿が一枚ありました。」

ミハイル「それじゃ調べようがないか」

ピノキオ「現場とか調べるとか……いったい何の話です。」
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