ー日常ー街の住人達

ーとある山中ー

道玄「……ふむ。」

雲水「……うむ。」

「「迷ったか」」

道玄「歳は取りたくないものだな。通い慣れたはずの道を忘れてしまうとは」

雲水「通い慣れたってもウン十年だろ。っていうか、根本的な事を聞くが……」

道玄「なんだ」

雲水「本当にこの山だったのか?」

道玄「それは間違いない。」

雲水「随分とそこはハッキリしてんだな」

道玄「ああ、昔山肌を抉ってこの形にしてしまったから、それだけは間違いない」

雲水「がはははっ。やんちゃだなぁ」

道玄「お前にだけは言われたくない。」

雲水「そんなこたぁねぇ。オレぁ今も昔もお前さんより手を出すのは早くなかった」

道玄「……」

雲水「睨むなよ」

道玄「睨んどらん」

雲水「がはははっ。お前さんはその目つきの悪さで喧嘩売られてたもんな。だから、話し合いが喧嘩が始まってから」

道玄「いい迷惑だ。」

雲水「がはははっ。っが、しかし、このままアテもなく迷うのも面倒だ。サーチしてくれよ」

道玄「儂をレーダーかなにかと勘違いしていないか?」

雲水「地殻レーダーだと自分でいっていただろ」

道玄「……ふんっ。」

ドンッ!

九つの龍の鎌首のひとつ……灰龍。正式名称は灰水晶龍。

龍剄気孔を地面にぶつけ、水晶振動周波(クリスタル・クオーツ)の原理を応用した「振動波」を使い。大地の波紋を探り辺り一帯の地形などを把握する。

また、コレを利用し地殻レーダーを真似ることも可能。

地殻レーダーとは第二次世界大戦でドイツがソ連の戦車群の位置を知るために研究していた技術。

無数の振動探知機と音波レーダーで通常では不可能な地上を行動する物体の把握が可能なのだ。

雲水「どうで?」

道玄「……うむ、大まかには把握できた。あっちだ」

雲水「がはははっ。お前といれば遭難はまずねぇな!」

道玄「そうでもない。一度雪山で遭難して仕方なく使ったときは振動で雪崩が起きた。」

雲水「がはははっ。爆笑だな!」

道玄「流石にあれは堪えたわ。まぁ、他に連れがいなくて幸いだった。死人が出るところだったし。」

雲水「お前さんの散歩に着いていく奴なんざ早々いねぇよ。」

道玄「ただの散歩だ。誰かに着いてきてもらうものでもな……むっ。見えてきたな」

雲水「おっ、本当だな。」

道玄「しかし……やはり場所は間違えたらしいな。儂が探していた沢はもっと木々が鬱蒼としていてこんなに開けてはいなかったんだが……」

雲水「なぁに、沢なら沢蟹はいるだろう。」

道玄「じゃあ、任せた」

雲水「任された……って、お前さんは?」

道玄「灰龍は儂と相性が悪い。使うだけで疲れるんだ。」
ゴッ!ゴゴッ!ガゴッ!

雲水「大岩を砕いて並べて椅子を作る行動してるやつが疲れているようには見えねぇんだがな」

道玄「休憩するなら居心地良くするのは当然だろう」

雲水「やれやれ、しゃあない……ぱっぱと集めるか。お、居た居た」
ひょい、ひょい

道玄「……儂にいわせたら勘だけで獲物を探して、殺気で追い出して気絶させるお前の方がサバイバルには向いてると思うがな」
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