ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

それからというもの、曲がり角にタコのような化け物(ゼリー)が居ても無視、部屋の中に地獄の鬼(ゼリー)が居ても無視を続けた。

造形性だけはいくらリアルでもゼリーと思えば怖くはない。

この調子で無視して殿下をがっかりさせようと皆で一念発起していた。

ところが……

ムーン1「あれ?」

廊下には一塊のゼリーが落ちている。

ムーン2「ゼリーなのはまちがいないけど、えらくシンプルだな。」

ムーン3「僕たちが無視するから殿下も飽きてきたのか」

話しているとブルンッとゼリーが揺れた。

ムーン2「えっ?」

そして意思を持ったようにゼリーの塊が動きだしたのだ。

ムーン3「動くーー!!」

ムーン2「わーっ!なんだこれはー!」

ウィーンッと音を出して蛇行しながらムーンたち二近づいてくるゼリー。

ムーン3「ちょっと待った機械音だ!」

ムーン2「なんだって!?」

動くゼリーを蹴飛ばしてみるとブチュンッとゼリーが破裂して中から何かしらの機械が飛び出した。

ムーン3「モーターが入ってる!」

ムーン2「殿下どうしてこんな真似を!!」

さらに別の場所では廊下の真ん中に巨大な二首の恐竜みたいな化け物(ゼリー)が設置されていた。

またかと無視して通りすぎようとしたチコだったが、その背後でドシッと音がした。振り向いてみるとドシンドシンッと怪物が動きだして追ってくる。

チコ「きゃああっ!?」

ムーン2「あわてるな!ゼリーの中にモーターが入ってるんだ!」

チコ「えええっ!?」


~~


動くゼリー怪物が色んなところで洗われだしたのでムーンたちは集まって話し合いが始まった。

ムーン1「なぜだ!こんな簡単に見破られることを殿下はなぜ続けるんだ!」

ムーン2「見破られて無視されることに快感を覚えるようになったとでもいうのか!」

ムーン3「ありえない!殿下は絶対的なサドでマゾじゃない!」

チコ「どっちにしても!あまりにも無意味ですよ!」

ギャーギャーと意見が飛びあっているとのんきな声が二人分聞こえてきた。

「「ただいまー」」

ムーン1「このクソ忙しいときにどこへ行ってた!」

ムーン4「エメラダ銀座商店街で食糧の買い出しだよ。」

ムーン5「なにをさわいでるんだ。」

ムーン1「このクソ忙しい…」

チコ「落ち着いてください。宮殿にいなかったんじゃ知らなくてもしょうがないですよ。」
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