ー日常ー街の住人達【8】

ーアラファト家政婦協会:タコ部屋ー

『神様は遠い空の上にいるのでは有りません。皆さんのそれぞれ心の中に在るのです。』

テレビを見ていると髪をオールバックに固めて笑顔を顔に貼りつけたようなハーフ(?)の青年が語っている。

マリア「誰ですこの人」

おばちゃん「おマリちゃん知らないの?「黄昏の10月教団」のジョージ=ワレンスキー牧師よ。」

おばさん「日本でもっとキリスト教を広めるためにアメリカからやってきたテレビ伝道師よ。イケメンなうえに年に似あわぬ渋い声おまけにお説教がわかりやすいから今、主婦の間で大人気なのよ。」

マリア「ふうん。」

お熊「おマリちゃん、ちょっと」

マリア「あ、はい?」

お熊「CIAの分析結果が出たわ。例のKGB日本支局長だったトカレフはソ連崩壊当時どさくさに紛れて多くの軍需物資やさまざまな極秘情報を盗み出し、それを横流しして莫大な資金を手に入れたの。その総額は一千億円ともいわれてるわ。」

マリア「いっせんおくえん!それだけあったら乳が残した百億円の借金も簡単に返せるんですが……」

お熊「トカレフに百億円くださいって頼んでみたら?」

マリア「……くれるとおもいますか?」

お熊「冗談よ。そのお金を持ってずっと潜伏していたトカレフが再び日本に姿を現し、家政婦派遣会社を設立したのは派遣会社をつかって一千億円の軍資金を表に出せるお金にするため。つまり、軍資金の洗浄化マネーロンダリングが目的ではないかというのが分析結果よ。」

マリア「でも…うちの協会年の商は10憶たらずと聞いてます。一千万ものお金をどうやって……」

お熊「だから会社を母体にして、株取引を装うとか、手はいくらでもあるわ。なんたって旧KGBよ。あらゆる裏工作のスペシャリストなのよ。」

マリア「う~ん……だとすると」

お熊「だとすると?」

マリア「向こうも必死で来るでしょうね。ものすごい大金が絡んでくるんですから」

お熊「そうね、新しい派遣会社は油断できないライバルのはずよ。あたしたちもこれまで以上に頑張らないと。」

マリア「そうですね。やれやれ……あ、やれやれついでに今日のお仕事行ってきます。」

お熊「今日はどこ?」

マリア「新橋の品川です。」

お熊「はっ?」

マリア「新橋に住んでる品川さまという一人暮らしのおばあさまの身の回りのお世話です。」

お熊「ああ、そういうことね。いってらっしゃい。」
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