ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「ホーライ号」

ホーライ号「はい」

ミハイル「おまえは、なぜホーライ号なんだ?」

ホーライ号「はあっ?」

ミハイル「名前のことだ」

ホーライ号「ああ名前の由来ですか。いえね、蓬莱山という仙人が住むという中国の霊山にあやかって縁起がいいかと思ってつけたんですが」

ミハイル「縁起がいい……言霊だ」

ホーライ号「はっ?」

ミハイル「名は体をあらわす。ホーライ号と名乗ったそのときからお前は縁起のいい存在になった」

チコ「つまり?」

ミハイル「他者に幸せをもたらす存在となったのだ。」

ホーライ号「はあ」

ミハイル「それがわかったからこそ出張所の他のムーンには見えなかった。おじさんや子供たちがお前の前に姿を現したのだ。縁起のいいお前なら何とかしてくれるのではないか、助けてくれるのではないかと思ったからだ。」

ホーライ号「どういうことです!?」

ミハイル「つまりこれこれしかじかで……お前が見たのは十年前火事で亡くなった人たちなのだ。」

ホーライ号「……!」

ミハイル「恐らく死んだことが信じられずずっとさまよっていたのだろう。そこにお前たちが現れてホテルを出張所として使い始めた。たぶん…だが生活をしているお前たちを見て何か違う。自分たちとはどこか違うと感じるようになったのではないか。つまり自分たちは死んでるのかもしれないと思うようになり、そのときお前の存在に気がついた」

ホーライ号「えっ?」

ミハイル「縁起のいいお前なら成仏させてくれるかもしれないと考えたんじゃないか。もちろんこれは全部僕の想像だが、しかし成仏させてほしいと願っているのでなければ、おまえについてエメラダにくるわけがない。お前を頼りにしてくっついてきてるんだぞ。」

ホーライ号「ええっ!?ぼくを頼りにして!?」

ミハイル「他にすがる相手のいない、さみしい存在なのだ。」

ミハイル「なんてお気の毒なひと達なんだ…ぼくになにがしてあげられるんだろうぼくになにが…」

そのとき、不思議なことが起こった。やわらかな光が頭上で広がると、おじさんや子供たちがその光の中へと昇っていったのだ。

『『『ありがとう』』』

ミハイル「ホーライ号おまえ凄いな。お前の心からの祈りがみんなを成仏させたのだ。おまえには死者を助ける力、おそらくこの世をさまよっているであろう多くの孤独な魂を救う能力があるのだ。そういう魂のために頑張ってみないか?」

ホーライ号「とおっしゃいますと?」

ミハイル「一年ほど世界を歩いて修行を重ねて一人前の霊能者になって帰ってこい。それがお前の天明だ。」

ホーライ号「殿下……わかりました!頑張ってみます!それじゃあ行ってきます!」

ミハイル「うむ。頑張ってこい!」

チコ「行っちゃった……珍しいことをお命じになりましたね。」

ミハイル「わが国では妖怪や異形の事件も多いからな。霊能者が居てもいいと思ってたところだ。」

チコ「ああ、そういうことですか…」
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