ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

次の日

チコ「殿下、フミン号さんから連絡がはいりました。」

どうぞ、といって電話をわたした。

ミハイル「ああ、フミン号かずいぶん時間がかかったな。」

フミン号『不動産屋を吐かせるのに手間どりまして。』

ミハイル「吐かせる?」

フミン号『とにかく取っ掛かりがないものですから、そもそもなぜ家賃が安いのかというところから攻めてみようと思って不動産屋に行ってみたんですが、担当者はもうやめてしまっていて、調べてみるから明日もう一度来てくれと言われたんです。で、今日行ってみると何だかんだとはぐらされて、あまりにも煮え切らないものですから……たいがいらせーよ!サクサク白状せんと頭をドヤカして胴体にめり込ませてへその穴から世間を世間をのぞかせてやるぞ!という具合に説得しまして』

ミハイル「なるほど」

チコ「そういうのは説得とは言いません」

フミン号『白状させたら10年前ホテルで火事が起きていたことが分かりました。』

ミハイル「火事!?」

フミン号『放火という説もありますが原因は特定されていないようです。その後立て直してホテルとしての営業を再開したのですが何か出るという噂が広がり、お客さんが入らなくなって結局五年前に潰れてしまったのだそうです。エメラダが出張所として借り上げるまでずっと空き家だったようですから家賃も安かったわけですよ。』

ミハイル「火事の被害者は?」

フミン号『判明してます。フロント係のオジさん、夫婦づれとその二人の子供たち、ウクライナ軍の軍人、ふくよかな中年のご婦人、以上です。』

みんなホーライ号が見た人たちである。

ミハイル「わかったご苦労。」

チコ「ホテルの幽霊……ということですか。」

ミハイル「うむ。しかし、なぜだ。」

マリア「なぜ?」

ミハイル「なぜホーライ号は火事で亡くなった人たちの姿を見て、なおかつエメラダに連れてきたんだ。いや…ホーライ号は意識してないようだから連れてきたわけじゃないのかもしれない。」

チコ「つまり連れてきたじゃなくて、ついてきたと?」

ミハイル「そうだな。亡くなった人たちがホーライ号に憑いてきたというのがしっくりくる。」

チコ「呪われたってことですか?」

ミハイル「それならもっと悪意ある被害が出ているはずだ。憑いてきた理由に何かあるな。ホーライ号を呼んで来い」

チコ「わかりました。」
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