ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

それからというもの……

職務中のムーンの前に立つとその様子をベタボメ号はじっと見つめた。

ベタボメ号「……」

ムーン「……なんだい?」

ベタボメ号「残念だな」

その物言いにムッとして聞き返す。

ムーン「なにが」

ベタボメ号「ここさ、このグラフをこうしたらもっと良くなるんじゃないか?」

ムーン「ええっ?ふうむ」

指摘を受けてしばらく書類を見つめたあと、言われた通りに手直しを加えた。仕上げ終わるとその書類を提出する。

ムーン1「おっ」

ムーン「えっ?」

ムーン1「いいじゃないか。ずいぶん見やすくなってる。今までよりずっといいよ。この調子で頑張ってくれ。」

ムーン「はーい」

自席に戻りつつベタボメ号にグッドサインを向けた。ベタボメ号もそれを見て胸をなでおろす。

それからも庭で剪定をしているムーンがいれば。

ベタボメ号「そこをそうしたら?」

剪定係「えっそう?……あっ、確かにいいね。ありがとう、君のおかげだ。」

ベタボメ号「いやいや。」

ムダに褒め倒すのではなく君ならできる。と、ほんの少し背中を押してやる。ベタボメ号の褒め方は大成功、に見えましたが、しかし……

違うそうじゃない!

そうだそれでいいんだ!

できたじゃないかやればできるじゃないか!

君ならできるんだ!僕は君を信じている諦めたらそこで終わりだ!あきらめるな!顔をあげろ!前へ進むんだ!

ムーン11「あーあ」

ムーン12「なんなんだ最近のベタボメ号は、どこかのテニスプレーヤーみたいに、やたら熱くなってる」

ムーン13「うっとおしいな」

すると、前からベタボメ号が歩いてくるのが見えた。

ムーン11「あっ、ベタボメ号だ。道を変えよう。」

角を曲がって道をそらす。

ムーン12「そうか」

ムーン13「えっ?」

ムーン12「これでいいんだ。顔を合わせなければうっとーしい思いをしなくて済む。」

ムーン11「なるほどそういうことか。」

それからというもの……。

ベタボメ号は職務室に向かうも誰もいない。仕事の時間だというのにみんなどこにいったのだろうと首をひねった。

さらに昼食時になったので食堂へと向かうも、やはり誰もいない。それどころかテーブルに料理が準備されていて「ベタボメ号」という札がかかっていた。

黙々と食べるも当然だがひとりで食べても美味しくはなかった……。
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