ー日常ー街の住人達【8】

ーミハイル宮殿:出入り口近くー

猫『なー』

ムーン3「はいよエサだよ」

ベタボメ号「可愛い猫だね。君が飼ってるの?」

ムーン3「いや、どこの子か知らないけど時々餌をもらいに来るんだよ」

ベタボメ号「男の子?」

ムーン3「そう」

ベタボメ号「綺麗な毛並みだねえ。さぞかしもてるんだろうなあ。君のその瞳で見つめられたら女の子たちはたまらないね。うらやましいなああこがれちゃうなあ。」

ムーン3「おいおい猫をヨイショしてどうする」

ベタボメ号「えっいやヨイショしてるつもりは……」

ムーン3「どう聞いてもヨイショだよ」

ベタボメ号「え~~っ……そういえば、ぼくが褒めるとみんな変な顔をしてたような気がする。ぼくは素直に褒めているつもりだったのにみんなヨイショだと思ってたのかな……え~~っ?心外だなぁ、心の底から褒めたのに口先だけのヨイショだと思われていたなんて、どうすればいいんだろう。どうほめたら口先だけと思われないですむんだろう。……難しいな。ただ褒めればいいんだと思ってた、人を褒めることがこんなに難しいなんて知らなかった。なんだか悲しくなってきた。」

落ち込んでいるときもなかなか口は回るらしくひとしきり喋り終わると膝を抱えて座り込んでしまった。

物陰から様子を殿下は手で喉を押さえて声色を変えていった。

ミハイル「『最初からほめ過ぎなんじゃないか』」

ベタボメ号「誰!?」

ミハイル「『名乗るほどのものではない。しょっぱなから褒め倒されると褒められた方は引いてしまう。わかるかいきなり褒められすぎると大抵の人間は褒められ慣れてないからコイツ本気なのか口先だけのオベンチャラやヨイショなんじゃないか。つまりなにか裏があって褒めてるふりをしてるんじゃないかと勘ぐってしまうのだ。そうなったらどんな褒め言葉も相手の心には届かない』」

ベタボメ号「どうすればいいんです!」

ミハイル「『例えば料理だ。いきなりてんこ盛りで出てきたら見ただけでお腹いっぱいになってしまう。反面ドーンと出したい気持ちを抑えて小出しにすれば落ち着いて食べられる。いや、もう一歩すすめて料理を振る舞いたい心をグッとこらえて、こらえて、こらえて相手がお腹が空いてどうしようもなくなったときドンッと出せば大喜び……となるわけだ褒め言葉も同じではないかな』」

ベタボメ号「ああ、なるほどそういう事か。ほめ神様!ありがとうございます!がんばってみます!」

ミハイル「……ほめ神様?」
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