ー日常ー街の住人達【8】
ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー
その日、殿下は朝から自室で書類に目を通していた。すると、追加の書類を持ってきたムーンがいった。
ムーン「殿下、グッジョブ。」
ミハイル「えっ?」
ムーン「真面目に仕事をしてますねぇ。えらいですねえ。立派ですねぇ。最高ですねぇ。んじゃっ。」
ミハイル「……なんだあいつは」
チコ「ムーンベタホメ号さんですよ。」
ミハイル「ベタホメ号?そんなやついたっけ?」
チコ「彼、実は先日国際アーマライトほめて世界を良くする協会に入会して名前を変えたんです。それまでムーンドンケツ号でした。」
ミハイル「えらい違いだな。うん?ちょっと待てよ、アーマライトはどこにかかってるんだ?」
チコ「さあくわしいことは……」
ミハイル「ふうん、まあ名前はともかくとして要するに褒めてひとを伸ばすとか褒めて周りを明るくするというコンセプトなのか。」
チコ「そうです。」
ミハイル「人間ほめられて悪い気はしないものだ。ベタホメ号は面白いことを始めたな。」
チコ「そう…ですねぇ。」
ミハイル「なにか気になるのか」
チコ「なにしろ、もとがドンケツ号ですから途中でコケなきゃいいなと思ってるわけです。」
ミハイル「他人を貶すわけじゃない。褒めるんだからコケようもないとは思うが……しかしあんなことをいわれると、ちょっと気になるな」
~~
時間は過ぎて昼食時、食堂にムーンたちが集まりだした。
料理係「はーい、デザートあがったよ。」
ベタボメ号「シェフ、シェフ」
料理係「シェフさん、呼んでますよー」
ベタボメ号「君だよシェフ」
料理係「ただの料理当番だけど」
ベタボメ号「君が作る料理は素晴らしい三ツ星レストランも目じゃないよ。ほんとに美味しい、感動的だ。夕食も期待してるあまりに美味しくてビックリするかもしれないな。あー楽しみだ。ハッハッハッ。」
料理係「そんなにおいしい?」
ムーン1「普通」
料理係「だよねぇ」
ミハイル「……」
昼食の時間を終えて午後の仕事が始まった職務室。
ベタボメ号「同僚諸君!日々のお仕事ご苦労様です。みんなのがんばりで今日も我が国は順調に動いています。みんなの努力は見事なものです。見上げたものです。たいしたものです。えらいものです。」
ムーン3「おい」
ベタボメ号「えっ」
ムーン3「何か言ってないで自分も仕事をしたらどうだ。」
ベタボメ号「あっ、あーはいそうね。でもぼくは」
ムーン3「でもぼくは?」
ベタボメ号「自分で仕事をするよりどっちかというとエールを送る側の人間だから」
「「なんなんだあいつは」」
ミハイル「ふむ……こうしてみると、ひとを褒めるのって案外難しいな。」
その日、殿下は朝から自室で書類に目を通していた。すると、追加の書類を持ってきたムーンがいった。
ムーン「殿下、グッジョブ。」
ミハイル「えっ?」
ムーン「真面目に仕事をしてますねぇ。えらいですねえ。立派ですねぇ。最高ですねぇ。んじゃっ。」
ミハイル「……なんだあいつは」
チコ「ムーンベタホメ号さんですよ。」
ミハイル「ベタホメ号?そんなやついたっけ?」
チコ「彼、実は先日国際アーマライトほめて世界を良くする協会に入会して名前を変えたんです。それまでムーンドンケツ号でした。」
ミハイル「えらい違いだな。うん?ちょっと待てよ、アーマライトはどこにかかってるんだ?」
チコ「さあくわしいことは……」
ミハイル「ふうん、まあ名前はともかくとして要するに褒めてひとを伸ばすとか褒めて周りを明るくするというコンセプトなのか。」
チコ「そうです。」
ミハイル「人間ほめられて悪い気はしないものだ。ベタホメ号は面白いことを始めたな。」
チコ「そう…ですねぇ。」
ミハイル「なにか気になるのか」
チコ「なにしろ、もとがドンケツ号ですから途中でコケなきゃいいなと思ってるわけです。」
ミハイル「他人を貶すわけじゃない。褒めるんだからコケようもないとは思うが……しかしあんなことをいわれると、ちょっと気になるな」
~~
時間は過ぎて昼食時、食堂にムーンたちが集まりだした。
料理係「はーい、デザートあがったよ。」
ベタボメ号「シェフ、シェフ」
料理係「シェフさん、呼んでますよー」
ベタボメ号「君だよシェフ」
料理係「ただの料理当番だけど」
ベタボメ号「君が作る料理は素晴らしい三ツ星レストランも目じゃないよ。ほんとに美味しい、感動的だ。夕食も期待してるあまりに美味しくてビックリするかもしれないな。あー楽しみだ。ハッハッハッ。」
料理係「そんなにおいしい?」
ムーン1「普通」
料理係「だよねぇ」
ミハイル「……」
昼食の時間を終えて午後の仕事が始まった職務室。
ベタボメ号「同僚諸君!日々のお仕事ご苦労様です。みんなのがんばりで今日も我が国は順調に動いています。みんなの努力は見事なものです。見上げたものです。たいしたものです。えらいものです。」
ムーン3「おい」
ベタボメ号「えっ」
ムーン3「何か言ってないで自分も仕事をしたらどうだ。」
ベタボメ号「あっ、あーはいそうね。でもぼくは」
ムーン3「でもぼくは?」
ベタボメ号「自分で仕事をするよりどっちかというとエールを送る側の人間だから」
「「なんなんだあいつは」」
ミハイル「ふむ……こうしてみると、ひとを褒めるのって案外難しいな。」