ー日常ー街の住人達【8】

ーアラファト家政婦派遣協会ー

泊まり込みの家政婦さんたちが集まっている通称タコ部屋では夜にはお菓子や飲み物を持ちこんで皆で愚痴や最近の出来事を肴に会話をするのが楽しみのひとつです。

おばさん「そうなのよ。そのときの旦那さまの顔ったら」

おばちゃん「奥さんが怖いんなら、浮気しなきゃいいのに」

家政婦A「男って馬鹿よねぇ」

番頭「こりゃっ!なにをくっちゃべっとる!もう10時を回っとる就寝時間を過ぎとるぞ!」

家政婦B「番頭さ~んせめて就寝時間を12時にしましょうよ~」

おばさん「子供じゃないんだから~」

番頭「電気のムダ!ムダに電気を使うということは無駄にCO2を増やすということで!!」

マリア「また始まった」

番頭「わかったら早よ歯を磨いて早よクソしてねるんじゃ!水道もトイレットペーパーも使いすぎるでないぞ!」

おばさん「番頭さんでしょうトイレットペーパーの使用量を一回30センチまでって張り紙したのは」

おばちゃん「まったくあのドケチぶりだけは……」

マリア「こないだボコボコにされて入院してたのにあっという間に復活しましたね。」

家政婦A「原生動物なみの回復力だわ。」

家政婦B「そういえばいつだったかもさあ」

おばさん「やめましょう。しゃべってるとまた叱られるわ」

おばちゃん「電気消すわよ。」

電気を消して布団に入るとそのまますぐ寝てしまう人もいますが中には布団に懐中電灯を持ちこんで本を読む人もいれば、ラジオを聞く人もいます。

おマリもラジオ派です。といっても聞いているのは大きな放送局の番組ではなく、家政婦協会の近くのビルの一室にあるミニFM局から発信される地域密着型のローカル番組です。

『今年の夏祭りの実行委員長に3丁目の魚政のご主人が選ばれました。』

マリア「(あの威勢のいい大将か適任だ)」

知ってる人や知ってる場所が、たくさん出てくるので聴いていてとても楽しいのです。

『次はR・Nパッパラーさんからのメールです。アラファト家政婦派遣協会ってありますよね。』

マリア「あら?」

『あそこの家政婦は性質が悪いそうです。冷蔵庫の食べ物を買ってに持ち帰ったり財布から、お金を抜き取ったりするそうです。』

マリア「えっ!」

『おやおや、これはひどいですね。お金を取ったら犯罪ですよ。あ、今のメールに反応してR・Nポコリンさんから、あたしも聞いたことがあります。あそこの家政婦が留守番を頼まれて小さな子供を虐待して、今訴えられてるそうです。』

マリア「うそだ!」

番頭「こりゃおマリ静かにせんか!」

おばさん「ちょっと、なあにおマリちゃんせっかくいい夢見てたのに」

マリア「それどころじゃないんです!ラジオを聞いてください!」

その後も家政婦協会に対する誹謗中傷が続きました。
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