ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「そんな几帳面な奴なら掃除は得意なんじゃないか?」

ムーン1「最悪です。」

ミハイル「なに?」

ムーン1「最悪なんです。小さなホコリひとつ砂粒一個ににこだわりますから、いつまでたっても終わらないんです。」

チコ「ほっといたら死ぬまで掃除してますよ。」

ミハイル「それはそれでやっかいだな。……なら、商談はどうだ。几帳面なところに好感をもってくれるお客さんもいるんじゃないか」

チコ「言いましたようにまっすぐなものはまっすぐにしないと気が済まない人間ですからお客さんが置いたペンが少しでも曲がってると……」

ミハイル「曲がってると?」

チコ「直しちゃうんです」

ミハイル「ま、まぁ、そのぐらいなら……」

ムーン1「書類が曲がっててもコーヒーカップが曲がってても、そのつど直すもんですからお客さんがイライラして怒って帰っちゃうんです。」

チコ「ですからそもそも商談にならないんですよ。」

ミハイル「使えない奴だなぁ。」

話していると書類を持ったムーンが入ってきた。

「殿下サインをお願いします」

ミハイル「僕が有名人だからか?」

「違います仕事です。」

ミハイル「うん?「キ」でなくて「ケ」?」

書類を持ってきたムーンの額には「ケ」と書かれている。

ムーン1「「ケ」号です。ケッペキ号です。」

ミハイル「わけのわからないムーンが多すぎるなあ。」

ケ号「あの、サインを」

殿下は書類を受け取ってペンを走らせるがインクが出てこない。

ミハイル「ありゃ書けない。インクがないのかな」

ペンを何度かシャカシャカと振ってみると一滴のインクがピッと飛び出した。ちょうど正面にいたケ号の制服に付着してしまう。

ケ号「……わーーーーっ!」

すると大声をあげて部屋を飛びだしていくと上着を脱いで手洗いで洗濯を始めてしまった。

チコ「潔癖症だからインクの染みなんか、我慢できないんですよ。」

ミハイル「まったくキ号といい、どうしてこんなやっかいなムーンが増えたんだ」

ムーン1「ゆとり世代だからです」

ミハイル「えっそうなのか?」

ムーン1「じゃないかなーと」

ミハイル「なんだあてずっぽか。それにしてもキチョーメンとケッペキか二人は気が合うんじゃないか?」

ムーン1「あにはらかんや」

ミハイル「違うのか」

チコ「ケ号さんはケッペキですから食事の時ナイフやフォークをアルコール消毒するんです。しかし几帳面ではありませんから曲がっておきます。それを見たキ号さんがまっすぐ直します。触られたものですからケ号さんがまた消毒してまた曲がっておいて、キ号さんがまっすぐに直してケ号さんが消毒してキ号が直して消毒して直して消毒して……そのうち喧嘩になります。」

ムーン1「ただから仲が悪いんですよ」

ミハイル「どうしょうもないな。」
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