ー日常ー街の住人達【8】

ー東京:役所ー

次の日おマリは役所に訪れた。

マリア「3丁目に出来る家政婦派遣会社のことについてお尋ねしたいんですが。」

役人「はい、なんでしょうか。」


~~


やっぱりお役所仕事だった。たいした話も聞けず役所を出るころには夕日が暮れかける時間になっていた。

すると見るからにガラの悪い男たちがぞろぞろとやってきた。

サングラスの男「嬢ちゃんつまらん真似をすると痛い目を見るぞ。」

これだけ完璧なタイミングで洗われるということは恐らく内通者が役所の中にも居るのだろう。

おばさん「現れたわ!」
おばちゃん「おマリちゃん頑張って!」

物陰から応援する家政婦仲間たち。だが、おマリは一目散に逃げだした。

サングラスの男「逃がすか!」

男たちはおマリを追いかけて角を曲がったのだがすぐに足が止まった。そこにはパトカー数台と何人もの警察が待ち構えていたのだ。

マリア「あのひと達です。」

警察「昨日の暴行傷害事件について聞きたい。」

既に辺りは包囲していたので男たちは抵抗することもなく簡単にお縄になって連れていかれた。

おばさん「おマリちゃんどうしてボコボコにしなかったのよ!」

マリア「そうしたかったのはやまやまですが、それよりバックに誰がいるか調べてもらった方がいいと考え、役所に行く前に警察と打ち合わせしたんです。」

おばちゃん「うーん、納得はいかないけど理屈は通ってるわね。」

マリア「ホッ」

そして次の日、お熊さんが帰ってきました。

お熊「まあ、そんなことが…」

マリア「番頭さんは一か月で退院できるそうです。」

お熊「災難だったわねぇ」

マリア「暴行犯たちはどこかの暴力団の若い衆でムシャクシャしてやったと言い張ってるとか」

お熊「ボスに命令されたとは口が裂けても言わないでしょうよ。とにかくこれで新しい家政婦派遣会社が暴力団とつるんでることがはっきりしたわ。」

マリア「この人物も関わってるらしいんですが」

あのとんでもない顔の男の写真を見せた。

お熊「トカレフ!!」

マリア「ご存知で?」

お熊「ソ連情報部旧KGBの日本支局長だった男よ!いつだったかKGBの話が出た時写真を見せたでしょう」

マリア「あっ!言われて思い出した……そうかぁ、写真を覚えてたんだ。」

お熊「ソ連が崩壊したとき、そのどさくさにまぎれて軍事物資を横領してて莫大な資金を手にして姿を消したのよ。死んだと聞いてたけど、トカレフが自分で流したデマだったんだわ。おマリちゃん彼は見た目よりはるかに危険な男よ。」

マリア「えっこの物騒な見た目より!?」

お熊「もし彼が新しい会社に関係してるなら、その家政婦派遣会社は容易ならぬ相手だわ。」

いったいどうなるんだろう。背筋が寒くなる思いのおマリでした。
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