ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

『バレてしまっては仕方がない。』

現れたのは白髭を蓄えた見るからに仙人を装った老人だ。

ミハイル「意外にあっさり出てきたなお前は何者だ。」

時の氏神『時の氏神じゃ。』

ミハイル「ときどきウジ虫?」

時の氏神『誰がじゃ!』

ミハイル「お前がじゃっ!」

時の氏神『なぜじゃ!』

ミハイル「どうしてじゃ!」

ここで時の氏神の鉄拳がさく裂した。ずいぶんと直接的な神である。

時の氏神『まじめな用件で出て来とるんじゃ!まじめに対応せんか!』

ミハイル「失礼こきました。真面目な要件とはなんでございましょう。」

時の氏神『最初からそう出ればよいのじゃ。よっく聞け、おまえたち人間は時間とはすんなり前に進んでいくものだと考えておる。1月の次は2月2月の次は3月と当たり前のように進んでいくものだ、とな。』

ミハイル「そうじゃないんですか?」

時の氏神『とんでもハップン。時間の流れは不思議なもので、ほおっておくとどっちに流れていくかわからん。つまり、ほっとくと3月の次に5月や9月が来かねんのじゃ』

ミハイル「へーえ」

時の氏神『そこで天帝陛下に任命された、わしら世界各地の氏神がそのようなことにならんようにコントロールしておるのじゃ』

ミハイル「早い話が3月の次に5月が来たりしないように、あなた方氏神様たちがコントロールしている」

時の氏神『そうじゃ』

ミハイル「興味深い話ですね。……2月の次は3月!」

時の氏神『4月5月6月!』

ミハイル「7月8月9月!」

時の氏神『10月11月12月!』

ミハイル「13月14月!」

時の氏神『15月16月!』

そのとき宮殿が大きく揺れた地震が起こったのだ。それだけでなく雷のなる轟音が聞こえやたら気温が暑くなってきている。

ミハイル「おおっ?!」

時の氏神『しっしまった!つられておかしな月を口走ってしまったために時の場が乱れが広がった!このままだとエメラダは崩壊する!最後の手段!!』

時の氏神が天に手をかざすと辺りを閃光が包んだ。

ミハイル「うっ……ん?」

ムーン1「はぁ…」
ムーン2「ふー…」

周りにはやる気のないムーンたちがだらだらと仕事をしている。

ミハイル「おお、時間が戻った。本当に時の氏神なんだな」

時の氏神『ゼェゼェ、やっと信じおったか。はじめからやり直しじゃ。そもそもなぜ部下に嘘の月を信じさせたりしたんじゃ。』

ミハイル「みんな五月病だからです。」

時の氏神『五月病?そんな感じはないな。ただ単に部下たちの体力がないだけのように見える。それについて心当たりは?』

ミハイル「ムーンの体力がない?う~ん……あっもしかしたら」

時の氏神『なにかあるか』

ミハイル「お金がもったいないから先月からムーンたちの食費を半分に減らしたんですが関係あるでしょうか?」

時の氏神『それじゃー!腹が減っとるから体力がないんじゃ!それだけのことなのに嘘の月を信じさせて大混乱をまねきおって!アホか!全部お前のせいではないか!食費を戻せ!今度騒ぎを起こしたらタダでは置かんぞ!』

ミハイル「全部僕のせい?食費を戻す?神様が出てきて大騒ぎしたあげくの結末が結局お金のかかる話だ!なんだこりゃー!」

チコ「殿下はなにを騒いでるんでしょうか?」

ムーン1「さぁ」
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