ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「今度は前にコケた。殿下、敵は攻撃方法を変えてきましたよ。」

ムーン1「今度は前にもクッションをつけるのかな」

ムーン2「歩きにくそうだなぁ。」

ミハイル「こらーっ!後神が前髪を引っ張ってどうするんだ!看板にいつわりありじゃないか!くそーっ!」

そう叫びながらどこかへ駆けだした。

チコ「すごい勢い…」

ムーン1「どこへ行くんだろう」

そう思っているとトンカンットンカンッと衝撃音が聞こえてきた。見てみると今さっき駆けだしていったはずの殿下がいるではないか。

チコ「工作室でなにかを作っている。」

ムーン1「それじゃ今走っていったのは?」

飛び出していった物体を見てみると殿下の下半身を模したロボットがそこら中を走り回っていた。

ムーン2「なんだありゃ。いつ、なんのためにつくったんだろう。」

チコ「殿下のやることは分からないなぁ。」

ミハイル「できたぞーー!」

殿下の手には人間の右手を模したテレビか何かの企画で使われそうな器具を突きつける。

チコ「またわからない」

ムーン1「なんなんですそれ。」

ミハイル「これで後神をつかまえるんだ!ハエ叩きならぬ妖怪叩きだ!」

手元のスイッチを入れるとブーーンッと何かが起動して、振り回し始めた。

何度か空を切るうちにバチッと破裂音。

チコ「あたった?!」

ミハイル「手ごたえ!このへんだなっ!」

狙いを済ましての大スイングと同時にバチンッとひときは大きな音を立てて見えない後神が床へと落下した。

ムーン1「出た!後ろ神だ!」

チコ「……えっ?」

後神『びーー!』

床で身震いしている後神はパソコンで見た姿絵にまさにそっくりだったが……サイズは中型の成犬ぐらいだろうか。

チコ「思ってたよりちいさいですね。」

ミハイル「大きさなんて関係ない!やい、後神、なぜ僕たちをコケさせるんだ!白状しないと叩き潰すぞ!」

妖怪叩きを振り上げると後神は両手を伸ばして抵抗する。

後神『ピッピッ!』

ミハイル「えっ自分のためじゃない?友達のため?」

後神『ピーーッ!』

ミハイル「倩兮女?」

チコ「け、らけら女?」

【倩兮女】

楚の国宋玉(そうぎょく)が東隣に美女あり 墻(かき)にのぼりて宋玉をうかがふ 嫣然(えんぜん)として一たび笑へば、陽城の人を惑せしとぞ およそ美色の人情をとらかす事 古今にためし多し けらけら女も 朱唇をひるがへして多くの人をまどはせし淫婦(いんふ)の霊ならんか。
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