ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「まったく慣れてどうするんだ。相手が凶悪な奴だったらやっかいだぞ。」

ムーン1「そういわれればそうだ。」

チコ「原因が妖怪だとして私たちをコケさせてるのはどんな奴なんでしょう」

ミハイル「コイツだ」

殿下がパソコンを操作しするとディスプレイに真っ黒な顔で頭頂部に一つ目の女性の幽霊のような姿絵と説明が表示された。

【後神】

うしろ神は臆病神につきたる神也。前にあるかとすれば忽焉(こつえん)として後(しりへ)にありて人の後髪をひくといへり。

チコ「うしろ……がみ?」

ミハイル「ふーん、思ったより大したことないな。人の後髪を引っ張ってコケさせるだけだ。」

ムーン1「えっそれだけ?」

ムーン2「たあいのない妖怪ですね。」

ミハイル「なにをいってる。悪いやつは悪いがそうでないのもいっぱいいるぞ。」

ムーン1「へーえ例えば?」

ミハイル「例えば加牟波理入道(かんばりにゅうどう)」

チコ「がんばりにゅーどー?」

ミハイル「基本的に夜中に厠を覗くだけの妖怪だ。」

ムーン1「ええっ、なんて無意味な」

ミハイル「しかし……『大晦日の夜 厠にゆきて がんばり入道郭公 と唱ふれば 妖怪を見ざるよし 世俗のしる所也 もろこしにては厠神の名を郭登といへり これ遊天飛騎大殺将軍とて 人に禍福をあたふと云 郭登郭公同日の談なるべし。』といわれている」

チコ「えーと、すみません。何を言ってるのか、よくわからないんですが」

ミハイル「いいんだ。僕にもわからない。」

「「「ええっ!?」」」

ミハイル「無意味といったが調べてみると意味のある妖怪の方がむしろ少ないんだ。例えば「うわん」」

ムーン1「おわん?」

ミハイル「うわん。こいつはなんか夜中に「うわん」と大声を出して通行人を驚かすだけの妖怪だ。」

チコ「ホントに意味がないですね。」

ミハイル「さらに例えばぬらりひょん」

チコ「あ、それは知ってます。」

ミハイル「どんなやつだと思う」

チコ「ええと、妖怪の親玉ですか?」

ミハイル「そういう扱われ方をすることも多いが実は全く違う。」

チコ「そーなんですか?」

ミハイル「本当は夕方、とてみ忙しくしている大きな商店に座りこむ……それだけだ。」

「「「はあっ!?」」」

ミハイル「邪魔だからどかそうと思ってもぬらりくらりしていてどかすことができない。ひょんとすわって邪魔でしょうがないというだけの妖怪なのだ。」

「「「へーええ」」」
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