ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

その日は珍しく仕事を適度に終わらせて宮殿内を闊歩していた。

チコ「……」

すれ違ったチコの後頭部に大きな湿布が貼ってあった。

ミハイル「おい、頭をどうしたんだ」

チコ「後ろ向きにこけちゃったんです。」

ミハイル「気を付けろ」

チコ「心配してくださるんですか。ありがとうございます。」

ミハイル「アホ、おまえの頭なんかどうでもいい。強くこけたら床が傷むから気を付けろといってるんだ。」

チコ「あーハイ…」

照れ隠しではなく心から人間より床のことを心配しつつ、さらに宮殿内を歩き続けていると、不思議なことに気がついた。同じように後頭部に湿布を貼った人間が何人もいるのだ。

ミハイル「ええっ?なんだみんなコケたのか?」

ムーン1「ああ、殿下そうなんです。なぜか分からないんですが全員そろって次々と」

ミハイル「アホも極まれりだな。そんなにコケたら床がいたんでしょうがないじゃないか。」

小言をいいながら一歩踏み出そうとしたミハイルだったがそのまま仰向けにひっくり返って後頭部を床に打ちつけてしまった。

チコ「あっ」

ムーン2「いってるそばから殿下まで…」

ミハイル「痛い!!痛いじゃないか!」

チコ「私どもにいわれましても…」

ミハイル「床には何もない。なぜコケたんだろう。」

四つん這いで自分がコケたところを調べても何も見つからず立ち上がったがそのまま仰向けに倒れて再び後頭部を床にぶつけた。

チコ「だ、大丈夫ですか?」

ミハイル「え、ええい!原因追求!」

飛びあがって自室に駆け込みパソコンで原因を調べ始めた。

チコ「……わかりましたか?」

ミハイル「あの部分だけ特殊な磁場が発生しているわけではなし、宇宙人による波動なども検知されない。とすると……死者の思念か」

「「「えっ!?」」」

チコ「殿下、おどかさないでください。」

ムーン1「ぼくたち、ただでさえ気が弱いんですから」

ミハイル「あっ!」

「「「!!」」」

ミハイル「むむむっ!」

「「「……」」」

ミハイル「わーーっ!!」

「「ギャーー!」」

ミハイル「違った。生きてる人間も死者も関係ないそうだ。」

チコ「無駄におどかすのやめてください!」

ミハイル「すると考えられるのは……妖怪だな」

「「妖怪、ホッ」」

ミハイル「何をホッとしている。」

ムーン1「あ、いえ、なにしろミハイル山には妖怪がウヨウヨいて、ぼくたち妖怪には慣れっこなので、つい」
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