ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ビニールパイプを咥えたまま殿下は突然立ち上がって叫んだ。

ミハイル「ふごー!ふごごー!ぶるすこぉーー!!」

チコ「何言ってるのかわからないんでパイプ取ってください。」

ミハイル「ぺっ!わかったぞ!犯人は小学生たちだ!」

「「えっ!」」

ムーン1「なんだか思いがけない方向に…」

ムーン2「まずいな」

チコ「まずい?」

ムーン1「コホン。殿下、子供たちがどうやってダンボールを盗み出したと?」

ミハイル「昼の間倉庫のドアに鍵はかかってないそうだな。」

ムーン1「そういうお話でしたね。」

ミハイル「子供たちは昼間倉庫に忍び込んだのだ。」

チコ「それで?」

ミハイル「ダンボールのかげに隠れた。身体が小さいから見つかる心配はない。」

チコ「確かに子供ぐらいなら隠れられるかもしれませんね。それで?」

ミハイル「天井に梁があったのを覚えているか?」

ムーン1「ああ、ありましたね。」

ミハイル「夕方オヤジさんがドアを閉め鍵をかけてから子供たちは持ってきたロープを取りだし梁を通すように投げる。そのロープを使って二人ばかり上にのぼって下の子供たちがロープをダンボールに結び付け引っ張り上げる。そうやって全部上にのせてから子供たちは下で夜を明かした、そして朝になってオヤジさんが来る頃合いを見計らって全員上に登って、オヤジさんがダンボールがなくなっていることに驚いてその場から離れる。当然上なんか見てる余裕あるわけがない。」

ムーン1「はあ」

ミハイル「子供たちはダンボールを落として開けっ放しのドアから外へ運び出してどこかへ隠した。そういうことだったのだ。これが真相だ。これが名探偵の推理という物だ!明日小学校の子供たちを宮殿に連行しろ!誰が犯人か白状させてやる!白状しなかったら百叩きに水責め火炙りだ!」

ムーン2「あわわわ」

ムーン3「えらいことに…」

ムーン1「殿下やめてください!」

ミハイル「なぜだ!」

ムーンたちはいっせいに土下座をした。

「「「子供たちは関係ありません!実はぼくたちがやったんです!!!」」」

ミハイル「あたりまえだ」

ムーン1「……えっ?」

ミハイル「本気で小学生がやったと思ってたわけじゃない。お前たちに自分が犯人だといわせるために嘘の推理を組み立てたのだ。」

ムーン1「ぼくたちの仕業だとわかってたんですか!」

ミハイル「僕がヒマだヒマだと騒いで殺人事件でも起きないかといってるところにお前たちがしゃつじーんず事件といってきた。どう考えても殺人事件のシャレだ。こんな間の抜けたネーミングを思いつくのはお前たちムーンしかいない……と、ピンと来てたのだ。しかし僕の退屈をなんとかしようとお前たちが気を使ってやってくれたことだから悪い気はしない、いやむしろ感謝している。」

「「「恐れ入ります」」」

ミハイル「ひとつだけわからないのは、お前たちがどうやって倉庫のドアを開けたか何だが」

ムーン1「わたしたちエメラダ銀座へはよく行っていてメリーアンのオヤジさんとも顔見知りなんです。オヤジさんの隙を見て型を取って合いかぎを作ったんです。」

ミハイル「分かってみれば簡単なことだな。」

以上しゃつじーんず事件でした。
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