ー日常ー街の住人達【8】

ー東京:牧野家ー

お熊「わたくしが、ご依頼を請けて尾行した探偵です。ご主人は仕事一筋で女性の影など一切ありませんでしたからご安心ください。」

奥様「……」

奥様は訝し気な視線でお熊を見やる。

それもそうだ。マリアは、まずいと叫びたい気持ちだった。あらかじめなにをするつもりか聞くべきだった。

そしたら服装を変えさせたのに。見るからにオカマさんがセーラー服を着て、探偵だといっても信用されるはずがない。

そのとき運悪くまっきーこと旦那様がお帰りになった。

牧野「ただいま(お熊、なぜここに!)」

お熊「(シッ)」

奥様「お知り合い?」

牧野「えっ、いやっこんな人は知らない!」

奥様「嘘おっしゃい!女の勘は鋭いのよ!ハッ、もしかしてこの人がお相手なの!?なんてこと!女だとばかり思ってたのによりによってこんなこんな……」

お熊「あたしは女よ!」

牧野「お熊やめろ!」

お熊「マッキーしいっ!」

お熊「やっぱり!」

マリア「あーっもうめちゃくちゃ!奥様違うんです旦那様は本当は日本CIAのエージェントなんです!」

牧野「君っ!」
お熊「おマリちゃん!」

マリア「こうなったらしかたありませんよ!出張というのは命がけの危険な任務なんです!浮気なんかじゃないんです!」

奥様「……あなた?」

お熊「あーあ」

牧野「やれやれ、君が苦しんでいるのは知っていたから、身分を明かしてはならない鉄則を破って……本当のことを打ち明けようと何度思ったか。しかし、もし本部にそのことが知れたら君にどんな迷惑がかかるかわからない。そう考えて揺らぐ心を必死で押さえていたんだ。君を愛しているから。」

奥様「あなた……」


~~


マリア「結局、正直に本部に話したところ。」

おばさん「別にだまっててもよかったんじゃないの?」

マリア「相手は情報収集のプロですからね。あとでバレると厄介ですから。奥様に旦那様の身分を絶対に口外しないという契約書を書かせてそれで済みました。こんなことならもっと早く打ち明ければよかったと旦那様が悔やんでましたよ。」

おばちゃん「とりあえずは一件落着ね。」

おばさん「でも、旦那さんが危険な仕事をしてると知った奥さんはこれから心配が絶えないわねえ。」

おばちゃん「でも、それって軍人の妻みたいなものでしょう。覚悟を決めて生きるほうが疑心暗鬼で病気になるよりずっと幸せだと思うわ。」

マリア「さすが人間が古いだけいいことを言いますね。」

「「だからっ!!」」
54/100ページ
スキ