ー日常ー街の住人達【8】

ーアラファト家政婦協会:休憩室ー

マリア「Okが出ました。奥さまもはっきり白黒つけてしまわれたいそうです。」

おばさん「それなら探偵事務所にうってつけの人物がいるわ。スッポンの山さんといってね。」

マリア「スッポンの山さん?顔がスッポンに似てるんですか?」

おばさん「どんな顔よ。違うわよ。スッポンのように一度喰いついたら、離れない尾行の達人よ。浮気調査のプロなの。」

マリア「期待できそうですね。」

それから翌々日……

お熊「ただいまー」

マリア「おや、お熊さん。CIAとうかがいましたが、どちらでどんなお仕事を?」

お熊「おマリちゃん、悪いけど情報部の極秘任務を一般人には話せないわ。」

マリア「失礼しました。」

お熊「それじゃあね。」

マリア「さて、旦那様もお帰りのはずです。山さんにゴーサインを」

おばさん「ラジャー」

さらに翌日、マリアに届いた報告は意外なものだった。

マリア「えっ、山さんがまかれた!?」

おばさん「備考に失敗したのは生まれて初めてだって落ち込んでるそうよ。」

マリア「どういうことでしょう?」

お熊「なあに、なんの話?」

マリア「お熊さん、実は……」

事のあらましをお熊さんに話した。

お熊「ふうん、浮気調査。山さんのウワサは聞いてるわ。素人がプロの尾行をまけるものじゃないわよ。相手もプロなんじゃないの?」

マリア「まさか、旦那様は普通の商社マンです。」

お熊「商社マン?」

マリア「はい、外資系の」

お熊「ご主人の名前は?」

マリア「牧野一郎」

お熊「……おマリちゃんちょっとこっちへ」

マリア「はっ?はあ……」

お熊に連れられておマリは外へと連れ出された。人通りのない建物の陰へと移動する。

お熊「これからあたしが話すことを誰にも言わないと約束してちょうだい。」

マリア「えっ、わかりました。」

お熊「私は日本CIAの協力要請を受けて北海道へいったの。例のテロ組織アルイカダがシベリア経由で北海道に作りつつあったアジトを叩き潰すためにあなたの雇い主と一緒にね。」

マリア「……えっ?」

お熊「マッキーは日本CIAのエージェントなのよ。」

マリア「ななな、なんですって!旦那様も奥さまもそんなことはひと言だって……!」

お熊「もちろん奥さんは知らないことよ。親兄弟にも身分を明かしてはならないのがエージェントの鉄則ですからね。」

マリア「それじゃ度重なる出張は!」

お熊「任務よ。彼が勤める総合商社こそ日本CIAの本部なのよ。」

マリア「浮気は!」

お熊「バカバカしい彼は国のため世界のため命がけで戦ってるのよ。」

マリア「でも奥さまは知らないし今のお話だと説明することもできない!このままじゃ奥さまは旦那様の浮気を疑い続けて病気になってしまいます!」

お熊「マッキーの家でそんなことになってるとは……困ったわね。よし、行きましょう。」

マリア「えっ、どこへ」

お熊「いいから私に任せて」
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