ー日常ー街の住人達【8】

ー東京:牧野家ー

おマリは現在、牧野という家に派遣されていましす。宅は子供はなく、出張の多い旦那様が少し気の弱い奥さま代わりに家のことをするようにおマリを派遣したのです。

旦那「今夜から三日出張だ」

マリア「またですか、だんな様。会社からお帰りになったばかりなのに。」

旦那「……」

マリア「あのー、奥さまのお加減があまりよろしくないのですが…」

旦那「医者はなんと言ってる」

マリア「気鬱症といいますか、神経が弱っておいでだそうです。」

旦那「それなら休んで気長に治すしかあるまい。薬をもらってやれ。じゃあ、いってくる。」

スーツに着替え終わると旦那様は出ていってしまった。

おマリはそれを見送ると小さくため息をついて寝室へと向かう。ソッと襖を開けて布団で横になっている奥さまに声をかけた。

マリア「奥さま」

奥様「……」

マリア「私はこれで失礼させていただきます。おかゆを用意しましたので食欲はおありにならないかもしれませんが少しでもめしあがってください。」

奥様「あのひとは?」

マリア「三日間のご出張だそうです。」

奥様「…そう。」


~~


家政婦派遣協会に戻るとマリアはお熊を探した。

マリア「お熊さんは?」

おばさん「うちとは別口の仕事で出かけてるわ。帰りは三日後だそうよ。」

マリア「こっちも三日の出張ですか。困ったなぁ相談に乗って欲しかったのに。」

おばちゃん「あらなによ水臭いわね。」

おばさん「お熊がいなくてもあたしたちが相談に乗るわ。」

おばちゃん「人生の先輩を頼りにしてよ。」

マリア「そうですね。人間が古いだけ知恵もおありでしょう。」

おばちゃん「相談に乗って欲しいの?喧嘩を売りたいの?」

マリア「こほん、今お世話になってるお宅の牧野様とおっしゃるのですが……ご家庭の中が暗くて」

おばさん「どうして?」

マリア「外資系商社マンのだんな様の出張が多くて奥さまとすれちがいが続いてるんです。奥様はそれを気にやんで病気のようになり、寝込んでしまわれました。」

おばさん「ちょっと待った。旦那が出張するたびに寝込んでたら日本中の奥さん大変よ。」

マリア「実は……そんなつもりはなかったんですが数日前、奥さまがお友達と話しているのを聞いてしまったんです。」

女がいるんじゃないかと思って……と。

「「不倫!!」」

ものすごい勢いでふたりは食いついてきた。
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