ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「ちょっと待ってください。そんなことやったこともないから自信がありませんよ。」

ミハイル「ただとはいわん」

チコ「は?」

ムーン1「殿下の口から出たとは思えないセリフだ。」

ムーン2「まったく…」

ミハイル「散財ついでだ一番気の利いた入浴剤を開発したチームに特別ボーナスを出そう。」

「「おーー!俄然やる気になってきた!!」」

「「くじ引きでチームに分かれよう!」」

「「やるぞーー!」」


次の日からムーンたちは気合を入れて入浴剤開発にいそしんだ。そこかしこからあーだこーだと相談の声が聞こえてくる。

ミハイル「みんな頑張っているようだな、けっこうけっこう。」

チコ「変なことにならないといいんですけどね。」

ミハイル「お前は参加しないのか?」

チコ「私はお風呂が大きくなっただけで十分ですから。今まではほんともう……」

ミハイル「それは仕方ない。基本的にうちは女が働くことはほぼない。お前は特例みたいなもんだ。」

チコ「けど、女子トイレはありまししたよね?」

ミハイル「働く者はいなくても来客はいるからな。」

チコ「なら、ついでに女子寮的なものとかも作ってくれませんか?」

ミハイル「お前ひとりにそこまでできるか、ばか者。」

チコ「ですよね……。」


~~


ムーン1「問題はコンセプトだ。目新しく気の利いた入浴剤ということになると普通のローズやラベンダーは使えない。なにかないか?」

ムーン2「ミソはどうだろう」

ムーン1「ミソ?どんな花だ」

ムーン1「花じゃない、食べる味噌だ」

「「ええっ!?」」

ムーン2「味噌に出汁を加えてお風呂のお湯に溶かすんだ。」

ムーン1「するとどうなる」

ムーン2「入浴しながら味噌汁が飲める!」

「「珍しいっちゃ珍しいけどなぁ。」」

また、別のグループでは……

ムーン4「そもそもなぜ入浴剤を入れるのか」

ムーン5「いい香りでリラックスして身体をきれいにするためだろう。」

ムーン4「逆をいってみないか?」

ムーン6「というと?」

ムーン4「ひどい悪臭で使えば使うほど身体が汚れる入浴剤」

「「はあ?!」」

ムーン4「目新しいのは間違いないぞ」

「「それはそうかもしれないけどさぁ。」」

またまた別のグループでは……

ムーン7「ようするに必ずしもいいものを作る必要はないんだ。」

ムーン8「なんだか哲学的なことを言いだしたな。」

ムーン7「つまりいいか悪いかは別として殿下の木にいるものを作ればそれでいいわけさ」

ムーン9「言ってることは分かるが…殿下の気にいるものというと?」

ムーン7「小銭」

ムーン8「まさしく殿下の気にいるものだな」

ムーン9「小銭をたくさん風呂にぶちこむのか?」

ムーン7「それだと入浴剤とは言えない」

ムーン9「そもそも小銭といいだした時点で入浴剤からはかけ離れていると思うが」

ムーン7「以前テレビでマジシャンがコップの水にコインをとかすマジックを見たことがある。あの原理で大量の小銭をお湯に溶かせば……」

ムーン8「殿下にとってはまたとない入浴剤だな」

ムーン9「よし、それでいこう早速開発に取り掛かるぞ!」
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