ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ムーン1「おおっ!すごい!」

ムーン2「ホントに広い!」

チコ「女子用の浴室までつくっていただいてありがとうございます。」

ミハイル「必要経費だ構わん。それより僕が入浴初めをするぞ。」

ムーン1「もちろんですとも」

ムーン2「どうぞどうぞ」

本当に大きな浴槽のふちに足をかけてピタッと止まるミハイル。

ミハイル「押すなよ」

ムーン1「は?」

ミハイル「絶対に押すなよ」

ムーン1「フリ?」

ムーン2「間違いなく。」

ムーン1「それではリクエストにお答えしまして……レディ、ゴー!」

謎のスイッチを押すと、巨体な手を模した装置が作動してミハイルの背中を突き飛ばした。浴槽のふちから大きく飛んで正面の壁に突撃して跳ね返って湯の中へと落ち込んだ。

そして、沈んだまま10分後……。

チコ「まだ浮かんできませんね。」

ムーン1「引っ張るなぁ。」

ムーン2「あっぱれな芸人魂だ。」

ミハイル「くおぉぉぉらぁぁぁっ!」

チコ「よく10分ももぐってられましたね。」

ムーン1「たいしたものです。感心します。」

ミハイル「頭を打ってお湯の中で気絶してたんだ!!なぜ助けない!死んでしまうだろうが!」

「「ハッハッハッ」」

ミハイル「なにがおかしい!」

ムーン1「私たちも野暮じゃありません。リアクション芸の邪魔はしませんよ。」

ミハイル「だから芸じゃないと……頭が痛ーい!」

裂けていた額からプーーっと血が噴き出した。

ムーン1「あっ、殿下の血がお湯に広がってピンクになってる。それなりに綺麗だな。」

ミハイル「こらーっ!おまえたち血を見てなにをのんきに!」

チコ「入浴剤を入れたみたいですね。」

ミハイル「……入浴剤?」

ムーン1「おや、なんだか食いついてきたぞ。」

ミハイル「入浴剤か。ただのお湯じゃつまらんな、よし入浴剤を入れよう」

チコ「買い置きがあります。持ってきましょうか?」

ミハイル「ふつうのやつじゃ面白くない。」

ムーン1「はあ?入浴剤にふつうもなにも……」

ミハイル「せっかく風呂を新しくしたんだ。だから入浴剤も新しくしたい。」

チコ「新しい入浴剤ですか、どこで買えるでしょう」

ミハイル「だから、お前たちが作るんだ」

「「「……えっ」」」

ミハイル「数グループに分かれてどこにもない目新しい入浴剤づくりにチャレンジしてみろ。」
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