ー日常ー街の住人達【8】

ー東京駅:周辺ー

家政婦仲間たちが散り散りで捜索を開始してすぐ、ベビーカーを押した老齢の女性の後ろ姿が目についた。

おばさん「さっそく発見!?」

家政婦A「かもよ!」

前に回りこんでベビーカーをのぞき込んだ。

赤ちゃん「あぅ?」

おばさん「違うわね。」

家政婦A「あやのちゃんはもっと可愛いわ。」

お婆さん「うちの孫が可愛くないですって!!」

「「キャーッ、失礼しましたー!!」」


それから数時間、駅を中心に範囲を広げつつ創作したのだが青空が赤に染まりだしてしまった。

おばちゃん『もしもし、おマリちゃん!?ベビーカーはたくさん見かけるけど和服の老婦人が押してるベビーカーってほとんどないのよ!』

マリア「引き続き捜索してくださーい!」

おマリ自身も走り回って捜索をし続けたが、ついには太陽が隠れ月が顔を出し、夜のとばりが降りてしまった。

重い足取りのまま、いったん鉄道警察へと戻ることにした。何か情報が入っているかもしれない。

警察「あっ、どうかね?」

マリア「見当たりません。同僚が続けて探してくれています。」

警察「そうか。こっちにも、まだなんの情報も入ってないんだ。」

マリア「大奥様達は?」

警察「たかしさんとやらが迎えに来て、とりあえず家に帰ったよ。早く見つからないと若奥さんを家から追い出しそうな……」

警察B「険悪なムードの姑さんだったなあ。」

マリア「大奥様はいつもそうです。ふだんからとても口やかましくて。」

警察「想像はつく」

マリア「若奥さまは方二のため14時30分の新幹線でご実家の京都にお帰りになるご予定だったのです。たかし様も会社が終わってからむかわれるはずでしたが……」

警察「こうなったら法事どころじゃないな」

警察B「あれ、14時30分発というと……事故のあった車両だ」

マリア「そういえば、そんな電話がかかってましたね。どんな事故です?」

警察B「路線に並行して走ってる道路でトラックが横転積み荷の機械部品がはずみで吹っ飛んで新幹線の窓を直撃。もちろん窓ガラスは大破、部品は座席にめり込んだがほとんど貫通しそうだったというから弾丸並みの破壊力だ。幸い空席だったので大事には至らなかったが、後部座席の客にガラスが当たったり肩を切る軽傷という事故だ。」

警察「空席でよかったな。」

警察B「ところがチケットは販売済みなんだ。」

マリア「えっ」

警察「何かの都合で乗らなかったんだろうが、運のいい人物もいたものさ」

マリア「あの、その空席の番号はわかりますか?」

警察B「えーと……」

マリア「(チケットを買った時に念のためにメモしておいたけど……)」

警察B「あった4両目の13のD」

おマリのメモに書かれていたのも4両13-Dだった。
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