ー日常ー街の住人達【8】

ー東京駅:ホームー

常に人の流れが込んでいる東京駅、そこでひとりの女性が赤ん坊を乗せたベビーカーを押して移動していた。

多目的用のトイレの前で止まるが、そこには清掃中の札がかかっている。

女性「まぁ……ベビーカーと一緒に入れるバリアフリーが……。困ったわ他のお手洗いに行っている時間はないし…」

視線を落とすと赤ちゃんは静かに寝息を立てている。

「あの、よろしかったら」

女性「え?」

「あたくしがみていてさしあげましうか?」

女性「えっ?」

「ちょうどおねんねしているから短い時間なら大丈夫ですよ。」

女性「お願いできますか?助かります!」

「はい、わかりました。」

ベビーカーを預けると女性用トイレに入って用を足し、外に出たのだが……誰もいない、ベビーカーもなくなっている。

女性「あやちゃん!?あやの!あやのーーーー!!」


~~


連絡を受けて駆け付けたおマリは職員に話を聞いて叫んだ。

マリア「大奥さまあちらです!」

鉄道警察と書かれたドアを開けて飛び込むと中では若奥さまが涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら警察らに事情を説明していた。

女性「お義母さま!」

大奥様「雪江さん!あやのが誘拐されたってどういうこと!?」

警察A「トイレで見知らぬ老婦人にお子さんを預けたらしいんですがね。その婦人が子供ごといなくなったんです。」

大奥様「見ず知らずの女に、あやのを預けるなんて、あなた何を考えてるの!」

雪江「もうしわけありません!もうしわけありません!」

土下座せんばかりの勢いで謝罪し続ける若奥さま。

大奥様「あやまってすむ問題ですか!あやのになにかあったらどうするつもり!料理や掃除が満足にできないだけかと思ったらこの不始末!これほど馬鹿な嫁とは知らなかったわ!」

それでもなお大奥様は責めたて続ける。さすがに見かねたおマリが口を挟むも。

マリア「大奥様、若奥さまも責任を感じていらっしゃいます。それに一番心配なさっているのは若奥さまなのですから。」

大奥様「一番心配しているのはわたしです!当然でしょうたかしの子供なのですよ!こんなバカな嫁と一緒にしないでちょうだい!」

取り付く島もないとはこのことだろう。

マリア「はあ…」

警察「(きついバア様だな)」

雪江「ワアアアッ!!」

ついには大泣きし始めてしまう。

マリア「わ、若奥さま」

警察「まあまあ、ここで揉めてもしかたありません。」
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