ー日常ー街の住人達【8】

ーアラファト家政婦派出協会:タコ部屋ー

本を開いて数分、だんだんとおマリの眉間にしわが寄っていく。

マリア「ん~~?これ、現代が舞台の恋愛ドラマですよね。」

おばちゃん「そのはずよ」

マリア「なぜ馬車に乗ってシャーロック=ホームズが現れるんです。」

おばちゃん「ホームズはまだ許せるとして」

マリア「許せるんですか?」

おばちゃん「恋の悩みの相談に乗ってもらうためにどうして宮本武蔵を招霊するの?」

マリア「ええっ?!なんだかめちゃくちゃですね。」

おばさん「最初はめちゃくちゃでも、これがすべて伏線になって後で全部綺麗にまとまるのかもよ。」

マリア「頑張って読みましょうか。」

「「「……」」」

床についていた三人だが、身を起こして本に集中し始めたのだが。

マリア「なんで恋人の大学生がサイボーグなんですか!」

おばちゃん「……ヴェガ星域から来た熊坂長藩って誰よ」

おばさん「この展開だとどうしてもパリに揚子江が流れてることになるわね。」

「「「……」」」

もはや半分意地になってさらに読み進めてくのだが。

マリア「結局夢オチかいっ!!」

家政婦A「ちょっとうるさくて眠れないわ。」

マリア「こっちはイライラさせられて眠るどころじゃない!何ていう下らない小説だっ!!」

おばちゃん「バカバカしいというか、あほらしいというか……」

マリア「どうしてこんなのが若者に人気なんでしょう!」

おばさん「テレビのエンタ番組なんかの影響かもね。」

マリア「は?」

おばさん「ようするにこの小説、3ページぐらいの単位で読むと面白いけど、単位のあいだのつなぎがものすごくいい加減なのよ。」

マリア「支離滅裂ですね。だからイライラさせられるんです。」

おばさん「エンタ番組って一発芸のオンパレードでしょう?そういうのに慣れてるから若い人は瞬間瞬間が楽しければそれでいいんじゃないかしら。」

マリア「なんだか日本の未来が不安になるような分析ですね。」

「「う~ん…」」


翌日……


お熊「おはよう。あたしの名作読んでもらえた?」

「「「……」」」

マリア「(感想を求められてます)」

おばさん「(なんて言えってのよ。あんなひどい小説)」

マリア「(リアクションしないとまずいですよ。)」

おばちゃん「(無駄にした時間を返せとでも?)」

マリア「(怒られます。)えーとですね、ある意味感動しました。」

お熊「そう?ありがと♪」

マリア「(よくこんなくだらない小説がかけるものだという意味で)」
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