ー日常ー街の住人達【8】

ーホテル:よど屋ー

ムーン1「お言葉ですが発砲音などは聞いていませんよ。もちろんサイレンサーをつけていたとして、火薬反応も調べましたか出ませんでした。」

ミハイル「犯人は火薬を使わず、弾丸を飛ばしたんだ。音はしないし殺傷能力も完璧な威力でな。ついでにいえば、腕に自信があれば弾丸は一発以上必要ない。」

チコ「その凶器はなんなんですか、弾丸ということは銃器ということですけど!?」

ムーン2「というか、そもそも弾丸はどこに?!」

殿下の推理にみんな口々に疑問を投げかけるがひとつひとつ答えていく。

ミハイル「昔のミステリーなら岩塩の弾丸を使うところだ、塩なら体内で溶けてしまうからな、しかし、ガイシャが死んで急速に体温が下がった場合、塩だと溶け残る可能性がある、だから今回の犯人はもっと確実に溶けるものを使ったのだ。」

チコ「といいますと?」

ミハイル「氷だ。氷の弾丸を発射したんだ」

ムーン1「ちょっと待ってください。氷の弾丸をどうやって持ち運んだんです。」

チコ「クーラーボックスなんて目立ってしょうがありませんよ。」

ミハイル「クーラーボックスなんかいらん、現地で調達したんだ。」

チコ「はぁ?!どういうことです…。訳が分かりません。」

ムーン2「殿下、犯人はいったい誰なんですか!」

ミハイル「犯人は小鳥遊柏だ。アイツの握力は中身入りの缶詰でも握りつぶせるほどある一種の超人だからな。氷の弾丸を指で弾き飛ばしても十分に危険だ。厚着していたのは恐らくロックアイスを買って身体に忍ばせておいたんだろう。それで適当なサイズに溶けるのを待っていた。鋭く尖れば殺傷能力は上がるし、残りはトイレに捨てればいい。フロントが威圧的という印象を受けたのもあの男なら納得だ。」

ムーン2「あの方が直々に出張るほどガイシャは大物だったのでしょうか。」

ミハイル「S国に恩を売る、エージェントとしての仕事……という建前より、高官が探偵ミハちゃんのいるエメラダに向かったと聞いて、自分が行くといったんじゃないか、密室や消える弾丸の謎を僕に提供してともに楽しむためだ。」

チコ「ええと…?」

ミハイル「ようするに」

チコ「ようするに?」

ミハイル「退屈だったんだろう」

「「はぁぁ?!」」

ミハイル「僕が変わり身の術なんかでヒマつぶしをしていたようにな、どうせもう国外だろうから追いかける必要はない。証拠も何も残っていないだろうし自殺で処理してしまえ、こっちも楽しませてもらったからそれで良しとしよう。」

チコ「いいんですかそれで…」
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