ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「ノックしてドアを開けさせチェーンの隙間から…」

チコ「それならドアの側に倒れていたはずです。死体は部屋の真ん中にありました。」

ミハイル「わかってる言ってみただけだ」

そのとき、誰かの携帯が着信した。

ムーン1「はい、もしもし……ああ、検死が終わったか……え?」

ミハイル「どうした?」

ムーン1「謎がもう一つ増えまし。ガイシャは右目を撃たれたのです。弾丸は貫通していませんから頭蓋骨の中に残っているはずなのに……なかったそうです。弾丸がなかったそうです。」

ミハイル「……」

殿下はそれを聞いてニヤッと口角をあげた。

チコ「なんです、その無意味で不気味でひしゃげた笑いは。」

ミハイル「なにが無意味で不気味でひしゃげた笑いだ!わからんか?」

チコ「なにがですか」

ミハイル「だからわからんか?」

チコ「だからなにがです」

ミハイル「素人考えでもいいから」

チコ「何を言ってるのかわからないから返事のしようがありませんよ。」

ミハイル「ハッハッ」

チコ「無意味な笑いはやめてくださいといってるでしょう」

ミハイル「うるさい!つまりだな」

チコ「はあ」

ミハイル「犯人はやりすぎたのだ。弾丸なんかどうでもいいのに不可解を強調しすぎてかえって手掛かりを残してしまった。」

チコ「えっ、まさかもう犯人の目星がついたと?」

ミハイル「もちのろん」

チコ「もちりん?」

ミハイル「餅屋は餅屋そんなことはどうでもいい、現場へ行くぞ。ホテル関係者に怪しい人物を見なかったか確認しろ」

チコ「はあ」


~~


現場はホテルの「よど屋」という場所だった。

ミハイル「こんなホテルあったかな」

チコ「ていうか、名前がよど屋って…」

ムーン2「殿下、ご苦労様です。怪しい人物と言われたので聞いておきました。」

ミハイル「どうだった?」

ムーン2「フロントの話によりますと、ゆうべS国の高官つまりガイシャがチェックインした10分後にマフラーで頭をすっぽり包み、分厚いコートを着た客がやはりチェックインしたのだそうです。見た目からして怪しいですがそれ以上に、どうしてなのかはフロントにも説明できなかったのですが妙に威圧的で迫力のある人物だという印象を受けたのだそうです。殿下、不思議だとは思いませんか?」

ミハイル「……」

ミハイルはやはりニヤッと笑いを浮かべている。
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