ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「殿下ー!殿下どこです!」

ムーン1「居ないぞ!どこに……あっ!殿下、大変です!」

椅子に腰かけているミハイルを発見して近づいてみるも、それは後ろ姿だけそっくりに作られた人形だった。

チコ「なんですこれ?!」

ミハイル「変わり身の術に決まってるじゃないか。」

チコ「わっ!?」

油断しているところに後ろから不通に現れる殿下。

ミハイル「で?なにがたいへんだって?」

ムーン1「殺人事件です!」

ミハイル「それを早く言わんか!!」

ムーン1「変わり身の術で邪魔したのは誰です!」


~~


チコ「被害者はS国政府の高官。ゆうべ遅くエメラダ空港に到着してホテルにチェックインしたのは真夜中、午前八時にモーニングコールを頼まれたのでフロントから連絡しましたが反応がなく、不審に思った支配人がベルボーイを連れて部屋に行き、マスターキーで入ろうとしたのですが、チェーンがかかっていてはいれず。仕方ないのでわずかな隙間から部屋の中を覗いてみたら……」

ミハイル「みたら?」

ムーン1「頭から血を流して部屋の真ん中で倒れている高官の姿が見えたそうです。」

ミハイル「高官の名前は?」

ムーン1「ドミトリー=ニジンスキー」

ミハイル「ニジンスキー?」

ムーン1「いえ、ニンジンスキーです。」

ミハイル「ピーターラビットか!」

ムーン1「それはともかく」

チコ「おどろいた支配人は警察に連絡するためにベルボーイを残してフロントに戻りました。」

ムーン1「殿下、おわかりですか?」

ミハイル「なにが」

ムーン1「チェーンがかかっていたのです。」

ミハイル「ふむ」

チコ「連絡を終えた支配人はすぐ部屋に戻り、ベルボーイとドアの外に立ってました、まもなく到着した警察は、ただちにチェーンを切って中に突入くまなく調べましたが部屋の中には誰もおらず凶器もありませんでした。ガイシャは右目を撃ち抜かれて死んでいたのです。わざわざ外国へ来て自殺するアホがいるかという問題を別にしても凶器がなかったのですから自殺ではあり得ません。」

ムーン1「おわかりですか?」

ミハイル「だから何が」

ムーン1「密室殺人です。」

ミハイル「支配人が戻るまでベルボーイはひとりだったのか」

チコ「ベルボーイが実は犯人とグルでひとりでいる間にこっそり逃がした?無理です。そもそも支配人が誰を連れていくかわからなかったわけですから」

ミハイル「いっぱいしの探偵みたいな口をきくじゃないか」

チコ「殿下に仕込まれましたから」
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