ー日常ー街の住人達【8】

ー鬼河原宅ー

鬼河原「やってもらうことは簡単です。通常の炊事洗濯掃除に庭の手入れわけのわからない勧誘を追い返したり町内会の寄付を断ったり。」

一つ一つは簡単でもやるのがひとりとなると結構なことだ。

マリア「はぁ」

鬼河原「一番肝心なのは中学二年のみきおの身の回りの世話。」

ひとり息子らしい男の子はゴツメの母親と違って線の細い利発そうな子だ。

みきお「……」

マリア「みきおぼっちゃまですかおマリですよろしくお願いします。」

みきお「フンッ」

マリア「(愛想が悪いなぁ)」

鬼河原「そうそうそれから借金の取り立て」

マリア「家政婦がそんなことまでやるんですか!?」

鬼河原「お宝を貸して利息をもらうのはうちの商売よ!!」

マリア「いや、家業の説明をされても」

鬼河原「大丈夫よ。素人にむずかしいことはできないから取り立てったって用意してあるお金を受け取るだけよ」

マリア「はぁ」

鬼河原「それじゃまず千住へ行って」

マリア「はいはい千住へ」

鬼河原「そのついでに銚子へ回ってちょうだい」

マリア「千住のついでが銚子っておかしくないですか?!」

鬼河原「いいから行くの!お金を持って帰らなかったらただじゃおかないわよ!!」

マリア「ひぇぇぇっ!予想以上の人使いの粗さだ!!」

結局おマリが帰ってきたのは真夜中でした。

翌日は朝早くから起きだして掃除洗濯食事の支度……。

調理しつつ今日も取り立てにいかされるのかなぁ。銚子あたりならまだしも千住からついでに熊本に回れなんていわれたらいくらなんでも身体が持たない。

「みきおくーん学校に行きましょー」

外から声が聞こえてきた。みきお君の友達が来たのだろう。

マリア「ぼっちゃまーお友達が迎えに来ましたよー。」

みきおを呼びつつ玄関を開けるとどう見ても50代後半頭がやや後退気味のスーツの男が立っていた。

「おはようございます」

マリア「ありゃっ?ずいぶんふけたお友達ですね。」

教師「担任です」

マリア「は?担任の先生がお迎えに?」

みきお「邪魔」

首をかしげているとみきおに押し退かされた。そのまま先生を無視して歩いていく。

教師「みきお君待ってくれたまえ!給食費の件お母さんに話してもらえたかな」

みきお「中学は義務教育だから払う必要はないと母はいってます。」

教師「いや、そいわれてもだねぇ…」

二人を見送る中、マリアにはそんな会話が聞こえていた。
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