ー日常ー街の住人達【8】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「まぁいい、二百年後としよう。その時代には犯罪がなくなっている。」

チコ「はあ?」

ミハイル「時間を超越するということは空間も簡単に超えることができるのだ。」

チコ「はあ」

ミハイル「タイムビデオカメラとでもいうべきものをイメージしてみろ。そのカメラを使えば時間的には数百年前の過去、空間的には宇宙のどこでも撮影できる。つまり使い方によっては一秒前の隣の家の台所の様子を撮影することも可能なのだ。」

チコ「ああ…」

ミハイル「わかるか?そんなカメラがある時代に犯罪を犯してみろ誰が殺したか誰が盗んだのかすぐにバレて見つかるだろう。だから犯罪がなくなるのだ。」

チコ「お話を聞いて自称名探偵がタイムビデオで現代の犯罪を撮影して、その映像を流しているのはわかりましたが……なぜそんなことをするんです?」

ミハイル「いや、その前に犯罪がなくなった二百年後には探偵なんてものもなくなっているはずだ。自称名探偵、仮にXと呼ぶことにするがXはどうして既に死語になっているであろう探偵という言葉を知っているのだ。推理小説…ミステリーか二百年後にも紙の本は残っているだろう。図書館かどこかで古いミステリーを見つけたXは読んで驚いた。謎があり推理があって探偵が居る。昔はずいぶんロマンチックな世界だったんだなぁーっと憧れたが、如何せん自分が居る世界には犯罪がない。それでもどうしても探偵になりたいと思ってXは二百年前に戻って探偵になろうと考えた。時間を超えて現代、今の時代を覗いて建材を見つけては現場を撮影して、その映像を警察に流す。」

チコ「あの、撮影してるだけで推理もへったくれもないから、とても本物の探偵の仕事とは言えませんよ?」

ミハイル「探偵ごっこをしているだけのXは素人だから犯人を捕まえればそれでいいと思っているのだろう。」

チコ「なるほど」

ミハイル「つまりXがどういった人間か考えてみれば……探偵好きで、いささかひねくれていて、さらにタイムビデオカメラを一般人が使えるとは思えないから、おそらく相当な権力者だろう。」

チコ「探偵好きで、ひねくれてて、相当な権力者……あれ?」

ミハイル「……あっ。」

このとき、それに該当するぴったりの人間が思い浮かんだ。というか、ここにいるではないか。

MC【殿下ノ子孫デハアリマセンカ?】

ミハイル「僕もそう思う」

チコ「私もです」
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