ー日常ー街の住人達【8】

ー東京:病院近くー

奥様とマリアは病院を出てしばらく無言で歩いていた。

街中の喧騒もどこか遠くに思えるほど静かな気配を奥様の背中に感じながら、おマリは聞いた。

マリア「あの……どういう風の吹き回しです?」

奥様「……」

マリア「確かに、私もこうなることを願ってましたが一夜にしてなぜ?」

奥様「昔の夢を見たのよ」

マリア「夢、ですか?」

奥様「夫が友人にだまされて多額の借金を背負ったうえ、会社が倒産して職を失ったと、私に告げた人生最悪の日の夢をね……。」


~~


夫は膝を抱えて肩を震わせていた。

本丸『……』

奥様『どうするの…明日の生活費もないのよ…』

本丸『もうだめだ…』

親子三人で心中するならガスが一番楽かしら……と、そんなことしか考えられなくなっていたとき。

ひろ美『お金ないの?』

奥様『ひーちゃん?』

幼いころのひろ美は両親がお金に困っていると察して自分の部屋から小さな貯金箱手にして戻ってきた。

それを差し出していった。

ひろ美「ひーちゃんの貯金あげる!」

『『!!』』


~~


奥様「夫と二人で泣きに泣いたわ。」

マリア「そんなことが…」

奥様「そして、そのとき、決心したのよたとえ泥水をすすっても生き延びるんだ、と。どんなことをしてもこの子を育て上げるんだ、と。私たちは子供に救われたのよ。」

マリア「……」

奥様「でも、彼女は子供を失いかけている。そう思ったらとてもほおっておけなくなった。同じ母親として……ね。もちろん夫を許すつもりはないけれど……でも、それはそれこれはこれ意地を張ってとんでもない過ちを犯すところだったわ。ありがとう。あなたのおかげよ。」

マリア「いえいえ、そんなことはないですよ。」

本当はいい方なんだな。

奥様「それじゃあ、失礼するわね。」

マリア「はい!…………ハッ!?奥さま、鷲に感謝していただけるなら、形にしていただけませんか!家政婦報酬にいくらかでもうわのせを!奥さまーー!」

出戻り家政婦、夢前マリア。
これから本業にせいをだします。
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