ー日常ー街の住人達【8】

ー東京青山:本丸家ー

マリア「ご愁傷様です。家政婦協会から参りました。」

家人「ああ、これはどうも、さっそくですが受付をお願いします。」

マリア「かしこまりました。」

受付に移動すると、弔問客がやってきた。

「どうもこのたびは」

マリア「恐れ入ります。こちらにご記帳をお願いします。」

「はい」

マリア「えーと、大丸屋の弁野さん。ダイベン様いらっしゃいましたーー!」

弁野「誰が大便だ!」

マリア「ダイ丸屋のベン野でダイベンに相違なかろう!!」

弁野「な、なんて強気な受付だ…」

妙な迫力に負けてブッブッ言いながら下がるとすぐに次の弔問客がやってくる。

「君、記帳を頼む。九層工業の垂木専務だが」

マリア「クソタレ専務様おみえでーーす!」

おマリが無理やり略して弔問客をおちょくっていたら……。

「あの……」

マリア「はい?」

子供を抱えた女性に声をかけられました。


~~


坊主「南無阿弥陀仏~」

マリア「大変だーーー!」

葬儀の最中、襖をふっ飛ばしておマリが飛び込んだ。

「なんだおまえは!」
「読経の真っ最中だぞ!」

マリア「それどころじゃない!今、外に子供を抱いた若い女性が立ってました!」

「外に子供を抱いた若い女性が立つたびにびっくりしとったら生涯ビックリせにゃアカンわい!」

マリア「その子供が亡くなられた社長さんの尾子さんだというんですよ!」

「なっ?!」「えっ!?」

奥様「……」

読経中よりも静まり返った部屋、社長の奥さまの顔が掘りつけたように硬くなる。そして、すぐにざわざわと騒がしくなる。

「おい、なんの冗談だ!」

「あの真面目な本丸社長がまさかそんな……」

マリア「これを見せるように言われました!社長様がお子さんを認知されたときの書類だそうです!」

預かった書類を差し出した。

「弁護士の木村先生!」

専属弁護士らしき男が受け取り目を通していく。

木村「……ちゃんとした書式だ。著名も本丸君のものに間違いない。」

マリア「つまり……」

木村「本当に本丸君の子供らしい。きみ、その女性をすぐにここへ連れてきてくれ。」

マリア「は、はい。」

おマリは言われるままに先ほどの女性を中へと案内した。

彼女はしずしずと室内へ入ると抱いていた子供を降ろすと、奥さまに向かって三つ指ついてお辞儀をした。
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