ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国:エメラダ銀座ー

ダイヤの直売所を窓から覗いてみるとグレームーンは息を飲んだ。

なんだ、この店のつくりは、と。そう思いながら観光客を装って入店する。

店員「いらっしゃーい。安いよ安いよダイヤが安いよ。」

宝石を扱う場合、良心的な店は店内が必ず明るい。

石の色やグレードをお客さんに正確に見てもらうためだ。ひるがえって、この店のように暗い店内強い光の下ではどんな石も綺麗に見えてしまう。

典型的な非良心的な店だ。殿下の肝いりでつくられたはずの店が、なぜこんな作りになっているのか。

さらにディスプレイされた石を見ていく、一見キラキラと美しく光を反射して輝くダイヤたちだが、どういうことかそこそこのグレードなんてものじゃない。全部酷いクズダイヤなのだ。

グレームーン「どういうことだ…」

すると店内に電子音が響いた。店員の男が電話を取る。

店員「もしもし、ああ殿下」

グレームーン「(殿下!?)」

店員「はっ?いいえ全身グレーの人なんか来ていませんよ」

グレームーン「……」

店員「よかった?なにが?はっ?えっ?なんですって?店を改装するー!?」

グレームーン「!!」

店員「なんです、いきなり……ええっ、もう業者を手配した!?そんなこと突然言われても!いや、しかし……!いえ……ええ、はい……わかりました。お客さんすいません。今日は店じまいです。」

そういわれてグレームーンは店を後にした。

グレームーン「店を改装?いったいどういうことだ。」


そして次の日、宮殿で出かけようとするグレームーンをミハイルが呼び止めた。

ミハイル「グレームーン」

グレームーン「はい?」

ミハイル「きのうはエメラダ銀座にいかなかったのか?」

グレームーン「きのうは商店街の北通りを歩いてみました。」

ミハイル「直売所の反対側か」

グレームーン「今日は南通りへ行くつもりです。」

ミハイル「南通りにはダイヤの直売所がある。覗いてみるといい。」

グレームーン「怪しい…」

言われた通り、昨日も訪れたダイヤ直売所へといってみる。

店員「いらっしゃーい。昨日はすみませんでしたね。ゆっくり見てってください。」

昨日とは打って変わって白い壁に明るい店内、ディスプレイされた石達もグズダイヤではなく、それなりのグレードの石に置き換わっている。

つまりは、普通の店になっている。……なぜだ。
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