ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉-

弁護神『では、サインを』

マリア「はいはい、あっ、お店の名前にしますか?」

お熊「おマリちゃんの個人名にしといてちょうだい。いやな予感がするから」

マリア「それでは」

躊躇なく名前を書きこむマリア。

転太「おい!ろくに契約書を読まずにサインなんかしていいのか!」

マリア「だって、神様の言葉だからどうせ読めませんよ。」

確かに契約書に書かれている文字は日本語でも英語でもない異界の文字である。

転太「絶対怪しい!」

お熊「同感」

弁護神『けっこうです。実は一回目のお金はもう預かっています。』

マリア「ほっほーい!」

弁護神『はい、八百一円』

マリア「……は?」

弁護神『一万年の分割だから一年分が八百円。それに利息の一円を足して八百一円です。』

マリア「一万年!?」

お熊「短い期間といったじゃありませんか!」

弁護神『何百万年も生きる神様にとっては一万年はごく短期間です。』

マリア「わちゃ~!」

転太「やられた!人間と神様の寿命の差を利用したXにしてやられた!」

お熊「弁護神も悪気があるわけじゃないわ。常識が違い過ぎるのよ!」

マリア「契約は無効です!」

転太「無駄だ、おマリ!お前は契約書にサインしてしまったんだ!」

マリア「弁護神、契約書にはXがわたしに一万年の間、八百一円ずつ払うと書いてあるのか!」

弁護神『しかり』

マリア「わたし自身に!?」

弁護神『当然です。あなた個人の名前で契約したのですから』

マリア「Xは私の子供でも子孫でもなく、わたし個人にどうやって一万年払い続けるつもりだ!わたしはせいぜい百年で死ぬ!」

弁護神『……!』

マリア「契約に文字通り順おうとするならXは私を一万年生きながらえさせる義務が生じるぞ!そんなことができるのか!」

弁護神『いや…人間の寿命は天帝の管理ですから、われわれ一般の神様には……』

マリア「それならXは契約を履行できないんじゃないか!だから無効だといったんです!不備が発覚した以上この契約はやり直す必要がある!そうXに伝えろ!」

弁護神『わっ、わかりました!』

転太「やった!うまくだましたつもりでXめ、肝心なところで、人間の寿命の短さを見落としていたと見える!」

お熊「長寿であるがゆえの油断ね!」

マリア「実力ならともかく知恵比べでなら負けるもんですか!!」

神様相手に契約合戦を始めたマリアこの勝負の結末はいかに……?
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