ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉-

マリア「山坂さん、これは自然な現象ですか!」

転太「……そう言われると、あの場所に怪奇なものが集まるのはかつての瘴気から霊的なブラックホールが生じたからで、その類のものは悪い波動を吸収してドンドン大きくなるのが普通だ。自然に小さくなるとは考えにくい。」

お熊「じゃあ、どうして怪奇が集まらなくなってるんです?」

マリア「集まってるんですよ」

お熊「え?」

マリア「誰かが引き算してるんです」

お熊「どういうこと?!」

マリア「前回の半神の事件を思い出してください」

お熊「ああ、妖怪や怪奇現象を無理やり宅配して暴利をむさぼる怪奇宅配店をやってた奴」

マリア「山坂さん、あいつひとりだけだと思いますか?」

転太「む……いや宅配業と名乗るからには一軒の店だけでは成立しづらいだろう。チェーン展開かフランチャイズ展開か知らんが、他にも何店舗かあるんじゃないか?」

マリア「そいつらは宅配する妖怪や魔物や化け物や不可思議な現象その他怪奇なるものすべてを……どこから仕入れてるんでしょう」

転太「……!」
お熊「……!」

転太「まさか…」

お熊「おマリちゃんが言いたいのは…」

マリア「うちの店からです!日本で一番わけのわからないものが集まるはずの場所から怪奇が減っている!これが引き算!かたや怪奇宅配店はどこかから持ってきた怪奇の在庫が山のようにあるはず!なければ商売にならない!これが足し算!引き算と足し算を合わせれば宅配店の連中がうちからひそかに怪奇を持ちだしているのは明白です!」

お熊「どういうこと?!」

マリア「怪奇宅配店がどういう経緯で成立したのかは推測するしかありませんが、私の予想では、おそらくブラックホールに巻き込まれうちのお店にやってきた何者かが面白いように怪奇が集まってくるのを見て、これを利用して、お金儲けができないか、と考えたのではないでしょうか。ついでにいうと、その何者かは、核宅配店の店長に半神を配しているところから自身も半神、もしかしたらもっと上級の神様かもしれません。もちろん、お金大好き神様でしょうが」

転太「ふうむ」

お熊「日本には八百万の神様がいるからそんなのが居てもおかしくないわね。」

転太「それでわしに相談とは……ハッ、そうか、わかった!その神様だかなんだかを焚きつけて、もっと引き算させて!すべての怪異を移動させ店を安全な場所にしようというのだな!その算段をわしにしろというのか、良いアイディアだが難しいな……」
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