ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉-

お客C「そこから、犯人が犯行現場にいたからこそ、犯罪が行われたのだと気がつき、連続殺人犯の正体に肉薄していくというストーリーなんだが……おわかり?」

マリア「はっ?」

お客C「ことほどさようにサンドイッチとは奥の深い哲学的な食べ物なんだ。婀娜やおろそかに考えちゃいけない。」

という話を聞いて厨房に戻り、洗い物をしているお熊にいった。

マリア「お客さんに訳のわからない蘊蓄(うんちく)を語られてしまいました。」

お熊「結構じゃないの。愚痴でも蘊蓄でも語ったりぼやいたりすることでお客様はストレスを発散するのよ。良い聞き手になることもあたしたちの大切なお仕事よ。」

マリア「スリランカですけどね。」

お熊「えっ?」

マリア「いえ、正論(セイロン)ですけどね」

お熊「もってまわったボケを…」

マリア「でも、推理小説をひきあいにハムカツサンドの哲学性を云々されても、なんと相槌をうっていいのか……。そもそもサンドイッチが哲学的な食べ物だなんて考えたこともありませんでしたたからねぇ。」

お熊「なにも真剣に悩まなくても。」

お熊の言う通り、右から左に聞き流せば良さそうな話なのに、なぜかおマリは気になって、その夜はなかなか寝付けませんでした。

マリア「あー、眠れない。なぜだろう昨日久しぶりの定休日で15時間眠ったせいかな。いや、そんな単純なことじゃないような気がする。やっぱりサンドイッチの何かが引っ掛かってる。整理して考えよう、パンが一、ハムカツも一、一+一は二でハムカツサンドの出来上がり。どこに問題があるのかしら……。どこにも問題はない無問題。ノープロブレム……逆に考えると二引く一は一か。…………二引く一は一だ!一を引かなければ一を足すこともできない!!引き算と足し算の問題です!!」

転太「……」

そう叫びながら飛び込んできたマリアに驚き手に持っていたカップを落としてしまう怪奇班の山坂転太。

お熊「ふあ~~今朝早くたたき起こされてから、ずっとこんなことを言ってるの。山坂さんに相談があるそうよ。」

転太「小学校の宿題の夢でもみたかね?」

マリア「おかげさまで学校に入ってませんが、そんなことはどうでもいい!お客さんにいわれて最近お店に化け物や怪奇現象が出現する回数がめっきり減ってることに改めて気がついたんです!」

転太「いいことじゃないか」

お熊「そうよ。おかげで静かだわ。」
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