ー日常ー街の住人達【7】

ー東京広尾:ビストロ温泉ー

借金女王のマリアとお熊とが務めるビストロ温泉、ここは足湯を楽しみながらお酒や小料理が楽しめる一風変わったビストロである。

そして変わっているといえばもう一つ、この店は……怪奇現象が起こるのだ。

今もハンドボールサイズで羽の生えた目玉の化け物が食事中の客に向かって飛びかかっている。

お客A「どうよ自滅党」

テーブルの上に置かれている氷殺スプレーを吹きかけると飛来する目玉の怪物は氷漬けになって湯の中へと落下した。

お客B「なんだかなー。民茶党もいまいちだし。」

何事もなかったように話を続ける二人の側に向かって今度は目も鼻もない鱗だらけの巨大な蛇のような怪物が大きく口を開けて飛び出した。

鋭利な牙が並ぶ大口に向かって胡椒、唐辛子、ラー油、タバスコを入れ物事投げ込むとグエーーッと悲鳴をあげて湯の中へと引っ込んだ。

お客A「おーい、胡椒おかわり。」

マリア「はーい、それにしてもお客さんたち化物の扱いになれてきましたね。」

お客A「まあね」

お客B「最初はびっくりしたけど」

お客A「毎日のようにこの店に通って毎日のように出くわしてりゃ慣れもするさ」

ミハイル「申し訳ないような情けないような。どうも、すいません。」

お客A「なぁにいいってことよ」

お客B「しかしこのごろちょいとおかしいな」

お客A「なにが?」

お客B「化け物が出たりでなかったりするだろう」

お客A「そういえば……以前は毎日、必ず出てたのに、このごろ出ない時はパタッと出ない日が続くんだ」

お客B「どういうかげんかなあ」

マリア「出ない方が安心して飲食を楽しんでいただけると思いますが」

お客A「そりゃまあそうなんだけどさ」

マリア「えー、ところでハムカツサンドのご注意はどちら?」

お客C「こっちだこっち」

マリア「おまたせしました」

配膳すると、お客はおもむろにサンドイッチを開いた。

お客C「おっ、ハムカツが入ってるな」

マリア「えーと、ハムカツサンドですから、当然です。」

お客C「いーやそうでない「オッタモール氏の手」を知ってるか?」

マリア「オッタマゲッチョの屁?」

お客C「……どういう耳をしてるんだ」

マリア「こういう耳」

お客C「……話を続けよう」

マリア「チッ(もう一段、ギャグを押したかったのに。)」

お客C「そういうタイトルの短編推理小説があるんだ。ある若い新聞記者が連続殺人事件を追っていたが、何の糸口をつかめない夜中、疲れてカフェに入りサンドイッチを注文したところ」

『サンドイッチには具が入っている……誰かが入れたから具が入ってるんだ!』
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