ー日常ー街の住人達【7】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ムーン1「よし、殿下の口を開けろ!」

チコ「はい!」

バールのようなものを口に突っこんで無理やり開口させる。

開いた大口にパラパラと錠剤を落としこんだ。ゴクッんと飲み込むと、汗だくで真っ青になっていたミハイルの顔に血の気が戻り、パッと目を開けたのだ。

ミハイル「……あれ、どうした?」

ムーン1「わーー!なんてよく効く薬だー!」

「「オーイオーイ!」」

抱き合ったり泣いて喜ぶムーンたちが落ち着いたころ、ミハイルが一連の話を聞いて宮殿の中に命の恩人である薬売りを招き入れた。

ミハイル「いやあ、おかげで命拾いしました。もう少し遅かったら危なかったそうなんです。」

薬売り『たまたま近くを通りかかって毒消しを求める電波をキャッチしたんです。』

チコ「最近の薬売りは無線機を持って歩いてるんですか?」

ミハイル「やはり薬売りというと富山のお方で?」

薬売り『アルタイルの薬売りです』

チコ「えっ!?」

ミハイル「アルタイルというと!石川県の?」

チコ「石川県にアルタイルなんてところがありますか!」

ミハイル「群馬県だったかな?」

チコ「アルタイルは太陽系から遠くへだったところだーーっ!!」

薬売り『ほっほっ、そのとおりです。』

深くかぶっていたフードのようなものを取っ払うとゴムのようなピンクの肌質で一つ目に尖った耳のどう控えめにとらえても人間ではない顔が現れた。

ミハイル「原始砲(プロトガン)用意!」

どっから出したのか中型のバズーカのようなものを構えるミハイル。

ムーン1「まっ、待ってください!相手は曲がりなりにも命の恩人ですよ!」

ミハイル「離せ!相手はインベーダーだ!名古屋撃ちだー!!」

薬売り『わけのわからないリアクションですね』

ぎょろっと大きな目が動く。

チコ「す、すいません」

薬売り『怖がらなくてもいいです。わたしはただの商人です。』

ミハイル「そんなこといって後ろを向いたらいきなりガブッと」

薬売り『めしえ41番星雲の方へ薬の行商に行く途中だったんですが、たまたま解毒剤を求める電波をキャッチしたので立ち寄ったのです。』

チコ「じゃあ殿下は運が良かったんですね。」

薬売り『ものすごい幸運ですよ。相当離れてましたから、普通なら電波をとらえなかったでしょうね。電磁波の乱れが起きたんでしょう。』
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