ー日常ー街の住人達【7】

ーとある山中:茂みー

男「こ、これは!?」

ロック「大金が入ってる、うまく逃げられたらその金でエメラダって国へ行け」

男「エメラダ?」

ロック「ミハイル殿下ってひとに事情を話すんだ。何とかしてくれるはずだ」

女「でも!」

ロック「行けっ!」

クライマンは二人を突き飛ばして、自分は茂みから飛び出した。

「居た!」

「撃て!射殺しろ!」

ロック「ふん!きさまらのひょろひょろ弾に当たってたまるか!」

何十もの発砲音がしだいに遠くなっていく。

男「行こう!」

女「クライマンさん殺されちゃうわ!」

男「一刻も早く人里に辿り着いてミハイルという人に連絡するんだ!ぼくたちに出来ることはそれしかない!」

後ろ髪ひかれる思いを残して二人は山を駆けおりていく。


ロック「はぁはぁ…」

銃弾の雨を掻い潜りクライマンも銃を抜いた。狙いを定めて、二度トリガーを引く、弾丸は大きな木の枝を撃ち抜いて追っ手の上に落下した。

その岩肌の隙間に身を潜める。

「ちくしょうどこへ隠れた!」

「さがせ!」

息をひそめていると聞き覚えのある声がした。

ガリガリ「待った待った!さきほど電話したガリガリという者だが、責任者は?」

「あちらです」

ずいぶんと警備が手厚いと思ったらガリガリの手引きがあったようだ。

ロック「(しまった!あいつを生かしておいちゃならん!)」

ガリガリ「わしの私有財産を連れておるんだ早く捕まえてもらわんと……」

ロック「ガリガリーー!!」

「「「!!」」」

クライマンは飛び出した。その結果どうなるか火を見るよりも明らかだったとしても……。


~~


ミハイル「人造人間たちから連絡を受けた僕はすぐ出発し、その日の夕方には現場についたしかし、ガリガリ博士も三百三十三号もこの世の人ではなくなっていた。そのあとガリガリ博士の研究所を捜索してみてさらに驚くべきことがわかった。博士は人造人間を召使として出家ではなく、兵隊として各国の軍隊に売り込むつもりでいたのだ。」

チコ「えっ」

ミハイル「そんなことになっていたらえらいことだ。いくらでも補充のきく人造兵隊の登場で世界中に戦争の火の手があがっていただろう」

新ムーン「うわお…」

新ムーン「三百三十三号は人類を戦争の魔の手から守ったんですね。」

新ムーン「えらい先輩だったんだなぁ」

チコ「ふたりの人造人間はどうなりました?」

ミハイル「博士のいなくなった研究所にもどった。今でもそこでひっそり暮らしているはずだ。しかし、勘違いするなよ。三百三十三番が永久欠番になっているのは彼が戦争から世界を守ったからではない。ひとりで逃げようと思えば逃げられたのに人造人間たちを守るためにみずからの命を犠牲にした、その気高い行為によるものなのだ!ロック=クライマンは犯罪者で悪い男だったがムーン三百三十三号はムーン部隊員の鑑だ。彼は今エメラダ全土を見下ろすミハイル山の頂上に眠っている。」

ムーン1「君たち新人も彼に負けないように頑張れよ。」

新ムーン「はい!僕は三百三十三号にあやかって番号を四百四十四号にします!」

新ムーン「僕は五百五十五号」

ミハイル「話の要点がわかってるのか?」

チコ「まあまあ、いいじゃありませんか。」
77/100ページ
スキ