ー日常ー街の住人達【7】

ーリヒデル王国ー

ムーン1「殿下。おかしいですよ。」

ミハイル「どうした?」

ムーン1「それが国王は冷凍されています。」

チコ「え?」

ムーン1「花を棺に入れるときに感じたんですが、中の温度が冷凍庫並みに低くなってるんです。どういうことでしょう」

ムーン2「冬眠してるんじゃないのか?」

ムーン1「まさか殿下じゃあるまいし」

チコ「どうもおかしいですね。」

ミハイルはハンカチを出すとさっきまでカールが吸っていたたばこの吸い殻をハンカチごしに摘み上げた。

ミハイル「指紋を検出できるか?」

ムーン1「は?」

ミハイル「あのカールと名乗っている男……前に会った人物とは別人の気がする。顔は似ているが全体から受ける雰囲気が違う。国王が冷凍されているというのは確かなのか?」

ムーン1「ほかの人間なら気がつかないかもしれませんけどね。調理当番として冷凍庫と冷凍ものには長年と経験を積んでますから」

ミハイル「なにかが間違ってる。調べろ」


早々に葬儀の場から退出し、あらゆる手を使って調査を開始した。そして数日後……。

チコ「調査の結果がでました。」

ミハイル「うむ」

チコ「フィルターから検出された指紋は警備隊から盗み出したカール大尉の記録のものとは一致しません。」

ムーン1「次に棺型の冷蔵庫を作った男を探しだし、おどしをかけて白状させました。何に使うのかは知りませんでしたが、面白いことが分かりました。あの冷蔵庫は九ヶ月も前に作ったものなんだそうです。つまり爆弾事件があったころです。ついでにもうひとつカール大尉には二つちがいの兄が居ました。アメリカで働いていて結婚式にも出なかったんですが九ヶ月前突然帰国してその後の消息は分かっていません。」

ミハイル「……」

チコ「以上の結果からひとつの推論がみちびきだされます。九ヶ月前の爆弾事件の時、実は国王もカール大尉も死亡したということです。アイシャ姫がなぜ隠そうとしたのかはわかりませんが。」


~~


推論とはいえ確信に近い答えを得たミハイルは再びリヒデルへと足を運び、アイシャとカールのもとへと訪れた。

ミハイル「と、いうことです。訳を説明していただきたい。」

アイシャ「いきなり訪ねてきて何を言い出すのかと思ったらバカバカしい。」

ホホホッと笑い誤魔化そうとするアイシャだが隣に座るカールの振りをしている男の表情は硬い。
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