ー日常ー街の住人達【7】

ーリヒデル王国ー

「陛下、エメラダ国王ご夫妻は多忙のためミハイル殿下が代わってご挨拶に見えられました。」

陛下「おおそうか」

初代教育係兼護衛のムーン0がミハイルを乗せた乳母車を押して入ってきた。

ミハイル「ふにゃっ」

陛下「おお、めんこい子じゃキャンディーをあげよう」

そういって棒付きの飴を差し出すや否やミハイルからシュルンッと舌が伸びて飴にまきつくとひとのみにしてしまった。

ミハイル「ゲーーップ」

陛下「……一瞬変わった出来事があったような。」

ムーン0「気のせいでしょう」

「御式が始まります」


~~


「えー本日アイシャ姫が12歳の誕生日をむかえられ社交界にデビューなされます。皆さまにはお忙しい中お祝いにかけつけていただきまことに~略~お待たせしました。姫君の登場です。」

拍手の祝福を受けて会場へと入ってきたアイシャ姫は本物の宝石をいくつもあしらったドレスに身を包み笑顔で席へと着いた。

アイシャ「ありがとう。どうもありがとう。」

「首相お言葉を」

首相「うむ、え~今宵姫君が社交界にデビューされて名実ともに大人の女性になられることはわれら国民の喜びとするところでございます。精神的にも肉体的にも一人前の女性になられてこれからは立派なプリンセスとして……」

首相の挨拶も拍手で締めくくられるとミハイルがムーン0へと耳打ちした。

ムーン0「えっ?はあ……陛下、うちの殿下も挨拶をしたいといっってるんですが」

陛下「おお、それはぜひやっていただこう。」

首相が壇上を降りると交代でミハイルが上った。

ムーン0「目立ちたがりなんだから~。挨拶の言葉なんて知ってるのかな。」

もちろん、人前に出たかっただけで何も考えていない。しかし、そこはミハイルです。

ミハイル「え~こニョいひね君がしゃこーかいにデニューさりぇてニャー実ともにさとニャのニョせーになニャねぬことは~え~~」

ムーン0「(なんだ、首相の真似じゃないか)」

「かわいーっ!首相のセリフを真似してるのよ!」

「あんな小さいのにかしこいのねー!」

ミハイル「せーしん的にもニャク体的にもいちにゃん前のニョセーになにゃってね~」

「きゃー!」
「かわいいー!」
「こっち向いてー!」

という感じに大うけだったのだ。

ミハイル「いやー、あの時ほど晴れがましい気分になったことはなかった。」

ムーン1「まあ、あの時はいいでしょう。でもそのあとがいけない」

チコ「なにかあったんですか?」

ムーン1「ええ、去年のアイシャ姫の結婚式の時に。」

ミハイル「何かあったかな?」

ムーン2「しらばっくれて」
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